オスプレイ訓練 沖縄の負担を軽減する一石に

 沖縄県の過重な負担を日本全体で分かち合うことは大切だが、実現性には疑問符が付く。

 日本維新の会の橋下共同代表(大阪市長)と松井幹事長(大阪府知事)が安倍首相と会談し、沖縄県に配備中の米軍新型輸送機MV22オスプレイの一部訓練を大阪・八尾空港に移転することを提案した。

 首相は、移転の可否について小野寺防衛相に検討を指示した。

 オスプレイは昨秋、米軍普天間飛行場に12機が配備された。今夏に12機が追加配備される予定だ。事故の恐れが高いという誤解や偏見が多いためか、沖縄では今も、配備への反対論が強い。

 オスプレイは既に、山口県の米軍岩国基地を拠点に日本本土で5回、飛行訓練を実施している。航続距離が長いだけに、さらに訓練移転を増やすこともできよう。

 沖縄の負担軽減に本土が積極的に協力したいという橋下氏らの問題意識自体は、評価できる。

 一方で、今回の提案が、実現可能性や軍事的な合理性を十分検討したものでないのは明らかだ。

 沖合滑走路のある岩国基地と違って、八尾空港は内陸の住宅密集地に位置する。周辺住民の騒音・安全対策が課題となり、地元市長も反対している。格納庫や給油施設などの整備も必要とされ、費用対効果も芳しくない。

 キャンプ富士、三沢基地など、既存の米軍施設の方が、はるかに現実的な選択肢だろう。

 橋下氏の慰安婦発言で、参院比例選投票先で維新の会が落ち込む中、今回の提案は失地回復を目指す政治的パフォーマンスにすぎない、との見方が出るゆえんだ。

 橋下氏は大阪府知事時代、普天間飛行場の移設先として関西空港を挙げたことがあるが、これも軍事的合理性に疑いがあった。

 首相が橋下氏の提案を前向きに受け止めたのも、参院選後の維新の会との連携を視野に入れているため、と見られている。

 だが、だからと言って、今回の提案を一過性のもので終わらせてはならない。政府と全国の自治体は、沖縄の米軍基地負担の軽減にきちんと取り組む必要がある。

 北朝鮮の核ミサイル開発や中国の急速な軍備増強を踏まえれば、日本の平和と安全を確保するために米軍の駐留を安定的に継続する必要性は一段と増している。

 これまでも、在沖縄海兵隊の実弾砲撃訓練や嘉手納基地所属のF15の飛行訓練は全国に分散移転されてきた。オスプレイについても着実に分散移転を進めたい。