中国・欧州摩擦 世界経済を損なう不公正貿易

 貿易を巡る国際紛争が頻発している。不公正な貿易慣行は是正し、世界経済を活性化させることが重要である。

 欧州連合(EU)は、中国企業太陽光パネルを不当に安値で輸出しているとして、中国製パネルに2段階で反ダンピング(不当廉売)関税をかける仮決定を下した。

 8月初めまで約12%を課税し、中国側が是正措置を取らない場合は約48%に引き上げる。EUは年末に最終決定する方針だ。

 EUによると、中国企業は市場価格より9割も安値で販売していた。採算を度外視しても、最大の輸出先であるEU市場に販売を拡大する狙いだったようだ。

 安値攻勢にさらされて経営が悪化し、倒産に追い込まれた欧州企業も出ている。EUが世界貿易機関WTO)の国際ルールに沿って、不公正貿易慣行の是正を目指す姿勢は理解できる。

 EUが第1段階として低率関税をかけるのは、対中強硬策に慎重なドイツなどメンバー国に配慮する一方、中国から穏便に譲歩を引き出したいとの判断がある。

 だが、中国は反発し、EU産ワインのダンピング調査を発表した。対抗措置とみられる。実害があるのか不透明なだけに、中国の強硬姿勢は、国際ルール逸脱と受け止められても仕方ない。

 中国とEUは、中国製の通信機器でも対立し、EUがダンピング調査に入った。制裁の応酬に発展しかねない事態である。

 欧州と中国は互いに主要な貿易相手になっている。対立がエスカレートすれば、世界経済にも悪影響が及ぼう。対話を通じ、早期収拾を目指してもらいたい。

 懸念されるのは、世界経済の本格回復が遅れ、新興国の成長が減速する中、自国産業の支援を意図した保護貿易主義的な動きが各地で強まっていることだ。

 カナダ・オンタリオ州再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度で地元企業を優遇した措置について、WTOは5月、不当だとする日本の主張を認め、カナダに是正を勧告した。

 日本は米国、EUとともに、中国のレアアース(希土類)の輸出制限措置や、自動車などを対象にしたアルゼンチンの輸入許可制度についても、不公正措置と問題視し、WTOに是正を訴えた。

 保護貿易主義の台頭は、世界経済の発展にマイナスだ。自由貿易推進へ、日本は今後もWTOルールを基本とし、米欧と連携する戦略を練らねばならない。