米中首脳会談 力に依存しては共存できない

 超大国の米国と世界第2位の軍事・経済大国である中国が信頼醸成を図ることは、アジア太平洋の安定に欠かせない。

 中国の習近平国家主席が米国を訪問し、オバマ大統領とカリフォルニア州の保養施設で会談した。中国の国家主席が就任後わずか3か月で訪米し、米大統領と会談したのは異例だ。

 2日間計約8時間にわたる会談を通じ、両首脳は米中両国の新たな協力関係を巡って協議した。北朝鮮の核問題での圧力強化や地球温暖化対策推進で一致したが、思惑の違いも目立った。

 習氏が目指す「新型の大国関係」とは、相互の社会制度や「核心的利益」を尊重する、米国と対等の関係である。会談で習氏が「広大な太平洋には両大国を受け入れる十分な空間がある」と語ったことには注意を払わねばならない。

 これに対し、オバマ氏は国際ルールの順守を前提にした「平和的な台頭」を中国に求めた。

 習氏は、米国主導の環太平洋経済連携協定(TPP)交渉に関する情報提供も要請した。対中包囲網への警戒感があるのだろう。

 焦点のサイバー攻撃による情報不正入手問題で、オバマ氏は、中国政府が関与しているとの米側の疑念を背景に、「この問題の解決は米中経済関係の将来のカギを握る」と懸念を示した。

 習氏が「中国は被害者だ」と強調する以上、不正入手阻止の対策を米国と進めてもらいたい。

 沖縄県尖閣諸島を巡る日中対立について、オバマ氏は「東シナ海での行動ではなく、外交ルートを通じた対話」を求めた。海洋監視船などを尖閣周辺の日本領海に侵入させる示威行動をやめない中国に自制を迫ったものだ。

 だが、習氏が逆に日本などを念頭に、「挑発を停止し、対話を通じ適切に問題を解決する軌道へ早期に戻るよう望む」と語ったのは身勝手に過ぎる。中国こそ、過激な挑発行動を控えるべきだ。

 中国が「核心的利益」とみなして、東シナ海南シナ海で一方的に海洋権益拡大を図っているのは、自らが標榜する「平和発展」に矛盾する行動ではないか。

 米国と対等の共存関係を主張するなら、それに見合った責任ある態度が求められる。国際ルールの順守は最低限の義務である。

 日米両政府は、主要8か国首脳会議(G8サミット)に合わせて首脳会談を開く方向だ。日本は、力に依存した大国意識を高める中国への警戒を緩めず、日米同盟の重要性を再確認する必要がある。