日仏首脳会談 互いに有益な原発・安保協力

 安倍首相が、来日中のオランド仏大統領と会談した。両首脳は、原子力や安全保障分野など幅広い協力をうたった共同声明を発表した。

 原子力発電については、原発の安全確立や放射性廃棄物の最終処分など包括的な協力に言及している。核燃料サイクル推進と、次世代の原子炉である「高速炉」の共同開発も盛り込んだ。

 日仏が技術や経験の蓄積を生かして協力する意義は大きい。

 東京電力福島第一原子力発電所事故の処理も、官民で連携を一層拡大する。フランスは、汚染水や土壌の処理などで高い技術を持つ。両国の連携強化は、原発事故処理を国際的に進める一つのモデルにもなろう。

 原発輸出に関しては、第三国への輸出に向けて、日仏が官民連携で取り組むことを明記した。

 三菱重工業と仏原子力大手アレバの企業連合は先月、トルコからの受注に初めて成功した。こうした国際戦略の展開は、双方の経済にとっても有益だ。

 共同声明のもう一つの大きな柱である安保では、「新たな大国の台頭で生じる課題に対応する」として、強硬姿勢を強める中国に対する連携強化を打ち出した。

 特に、「海洋法の原則の尊重」といった海洋関連の項目には、太平洋に自国領の島々を持つフランスと、対中国で協調できるとの日本側の期待がある。

 ただ、仏防衛企業は先般、悪天候でもヘリコプターが着艦できる装置の輸出契約を中国と結んだ。日本側は、尖閣諸島周辺で中国公船が領海侵入を繰り返しており、中国の船の能力増強は好ましくないと仏側に懸念を伝えてきた。

 両首脳が、武器転用が可能な装備品の輸出を協議する政府間対話の開始で合意したのは一歩前進だ。今後も対中輸出に、厳しく抑制を求めていく必要がある。

 大統領は会談後、国会で演説し、日本と中韓両国との関係が歴史認識を巡って緊張していることを念頭に「過去に対しては一線を引かねばならない」と述べた。長年戦争を続けた仏独両国が関係を改善したことを例に挙げた。

 歴史認識の問題については、日本の立場を仏側にも丁寧に説明していかねばなるまい。

 今回のオランド氏の訪問は、仏大統領としては、シラク氏以来17年ぶりの国賓訪問だ。サルコジ前大統領は、中国との経済関係を重視し、とかく日本に冷ややかだった。オランド氏の来日を日仏関係再出発の機会としたい。