自民地域版公約 普天間「県外移設」は二枚舌か

 安倍首相の重い政治決断や党本部の方針と相いれない県連の政策を公約に掲げることは、政権党として無責任である。

 自民党沖縄県連が、7月の参院選の地域版公約(ローカルマニフェスト)に米軍普天間飛行場の「県外移設を求める」と明記することを決めた。

 自民党の石破幹事長や高市政調会長が再三、「県外移設」を盛り込まないよう県連幹部に説得を試みたが、不調に終わった。

 県連は元々、普天間飛行場の名護市辺野古への移設を支持していた。だが、民主党政権の失政への反発から県外移設を求める県内世論が高まってしまったため、仲井真弘多県知事と同様、「県外移設」に方針転換した経緯がある。

 参院選沖縄選挙区では、自民党公認の新人が野党系の現職に挑戦する予定だ。県連には「辺野古移設を主張しては選挙に勝てない」との声が出ている。

 しかし、普天間移設は日本の外交・安全保障政策に深く関わる重要問題だ。国政選である以上、地域版公約とはいえ、地域事情だけで判断すべきではあるまい。

 党本部が「辺野古移設」を公約に明記する方針なのに、県連が矛盾する政策を掲げ、使い分けるのは、有権者を惑わすだけだ。

 普天間問題は今、長年の懸案が解決するかどうかの極めて重大な局面を迎えている。

 安倍首相は2月の日米首脳会談で辺野古移設を推進する方針を確認し、3月に辺野古沿岸部の埋め立てを沖縄県に申請した。

 重要なのは、安倍政権が、辺野古移設を推進する今の立場から決してぶれないことだ。埋め立てに同意した名護漁協は「自民党公約に辺野古移設が明記されなければ同意を撤回する」としている。

 仮に埋め立てが不許可となれば政権への打撃は避けられない。

 自民党は、首相がそのリスクを取る政治判断をしたことを重く受け止め、一丸となって辺野古移設に協力するのが筋である。

 そもそも県外移設は何の具体案もなく、実現性が乏しい。普天間飛行場の危険な現状を長期間、固定化させるのは確実だ。沖縄にとって賢明な選択ではない。

 県連内には、西銘恒三郎衆院議員や島尻安伊子内閣府政務官など辺野古移設を容認する動きが出ている。政府・自民党は、まだ声を上げていない地元の容認派などと積極的に連携すべきだ。

 まず県連を翻意させることが、仲井真知事が埋め立て許可を決断する環境整備の一歩となろう。