財政再建目標 達成と景気回復の両立を図れ

 日本経済を再生し、安定した成長軌道に乗せるには、財政健全化が不可欠だ。政府は財政再建と景気回復の両立を図らねばならない。

 政府の財政制度等審議会は報告書をまとめ、国と地方の基礎的財政収支国内総生産(GDP)比で「2015年度に10年度から半減し、20年度に黒字化」という財政再建目標の堅持を求めた。

 日本の財政は、国と地方の長期債務残高がGDPの2倍の1000兆円弱に達し、先進国最悪の状態にある。

 基礎的財政収支は、政策的経費を借金に頼らず税収でどれだけ賄えているかを示すもので、13年度の国と地方の赤字はGDP比6・9%に拡大する見通しだ。15年度半減や20年度黒字化の目標達成は高いハードルと言えよう。

 加えて、安倍政権の経済政策「アベノミクス」の一環で、日本銀行が大胆な金融緩和を実施し、大量の国債を購入している。

 報告書が、財政赤字の穴埋めをしているという疑念を招かないよう警告したのは、もっともだ。

 財政の信認が揺らげば、国債価格が急落して長期金利が一段と上昇しかねない。企業の投資意欲が減退して明るさが見えてきた景気を冷やし、国債の利払い費も増大する。財政赤字がさらに膨らむことに警戒が必要だ。

 政府は、今回の報告書を踏まえて、6月に発表する「経済財政改革の基本方針(骨太の方針)」に目標達成の決意を盛り込む。

 日本は、4月の主要20か国・地域(G20)財務相中央銀行総裁会議の共同声明でも、「信頼に足る中期財政計画を策定すべきだ」と指摘された。

 機動的な財政政策で足元の景気をテコ入れすることは重要だが、中期的な財政再建の道筋を描かねばならない。

 報告書は、社会保障費の抑制や税収を増やす成長戦略の必要性も強調した。経済再生を確実にするカギは、成長戦略にある。

 それには、規制改革で新たな市場を開拓するとともに、民間の技術革新を促進する政策が欠かせない。景気回復を着実に実現しながら、消費税率の引き上げを目指していくことが政治の課題だ。

 7月の参院選を前に、公共事業や、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉参加をにらんで農業分野などで歳出圧力が高まっていることが懸念される。

 政府は事業の必要性や効率性を十分に吟味し、メリハリのついた支出を徹底すべきだろう。