体罰緊急調査 再発防止へ問題意識高めよ

 体罰が教育現場に根強く存在する実態が裏付けられたと言えよう。

 文部科学省が、大阪市立桜宮高校の体罰自殺問題を受け、全国の公立小中高校などを対象に実施した緊急調査の結果を公表した。

 調査結果によると、昨年4月から今年1月にかけて、体罰があったと報告した学校は752校だった。計840人の教師から、1890人の児童・生徒が体罰の被害に遭っていた。

 教師はどのような状況で体罰に及んだのか。教育委員会はその経緯と原因を丁寧に検証し、再発防止につなげねばならない。

 体罰が目立ったのは、授業中(31%)と部活動中(28%)だった。素手で殴るケースが多いが、棒などの道具を用いた体罰もある。骨折や鼓膜損傷、打撲など、子供にけがを負わせた事例も、実に全体の3割近くに上る。

 学校教育法は体罰を明確に禁じている。児童・生徒を負傷させる体罰は、傷害罪や暴行罪に問われてもおかしくない悪質な行為である。教育委員会は、教師の厳正な処分はもちろん、学校名の公表も検討すべきだろう。

 体罰が確認された公立校の教師数は、これまで年400人前後で推移してきた。今回、報告件数が大幅に膨らんだのは、桜宮高校の事件をきっかけに、体罰に関する各学校の問題意識が高まり、事例の掘り起こしが進んだためだ。

 一方で、体罰と厳しい指導の違いを十分理解していない教師もいる。文科省は先月、両者の区別を明確にするための具体例を通知した。教室内に立たせるのは指導の範囲内だが、反抗的な生徒の頬を平手打ちするのは体罰になる。

 どのような事情があれ、教え子に暴力をふるうことは決して許されない。すべての教師は肝に銘じるべきである。

 体罰事例を題材に、教師がとるべき対処方法をまとめた研修資料を作成した教育委員会もある。こうした取り組みを進めたい。

 何よりも大切なのは、教師一人ひとりが、暴力に頼らない指導をするという自覚を持つことだ。

 自分の感情をコントロールし、言葉で叱って、上手に導く教え方を身に着ける必要がある。

 保護者の中には、生徒との信頼関係が築かれていれば、教師の体罰を認めても構わないという考え方がある。

 だが、体罰は子供の人格を傷つけ、屈辱感を与えかねない。教育効果どころか、害を及ぼすということを保護者も認識したい。