B787再開へ 安全最優先で世界の空を飛べ

 出火トラブルで運航を停止されていた最新鋭の米ボーイング787型機が再び、世界の空を飛ぶ見通しになった。

 なにより最優先すべきは安全運航だ。揺らいだ信頼を取り戻す必要がある。

 米航空当局は運航停止命令を解除し、国土交通省も同様に解除する。これを受けて、全日本空輸日本航空は6月にも国内線と国際線の営業運航を始める。

 787は今年1月、米ボストンの空港で日航機のバッテリーから出火した。全日空機でも同月、バッテリーから煙が出て、高松空港緊急着陸した。

 相次ぐトラブルを重視した米連邦航空局(FAA)は、34年ぶりに停止命令に踏み切った。世界の航空会社8社が合わせて約50機の787の運航を一斉に見合わせたのは、異例の事態である。

 航空当局が約3か月半ぶりに運航再開を認めるのは、ボーイングが、問題となったバッテリーの設計を変更する改善策を講じたことを評価したからだ。

 バッテリー内に8個ある電池の耐熱性を高め、発熱しても隣の電池に熱が伝わらないよう隔壁を補強した。その上で、バッテリー全体を無酸素状態の容器に入れて発煙を防いだという。

 二重三重の出火防止策により、試験飛行でも安全性が確認されたことから、航空当局は、運航再開にひとまず支障はなくなったと判断したのだろう。

 だが、原因究明を進めていた米国家運輸安全委員会(NTSB)などの調査では、依然として技術的な問題は特定されていない。

 NTSB内には、かつてFAAが電池を十分に審査しなかったことが一因とする見方があるが、この真相も不明である。

 国交省全日空日航は、飛行中の電池の電圧データを地上に送って異常を監視するといった日本独自の対策も含め、安全確保に万全を期してもらいたい。

 そうした地道な努力が、利用者の不安解消につながるだろう。

 最新技術を取り入れた787は燃費性能に優れた省エネ中型機だ。米欧メーカーだけでなく、日本企業が機体の35%を製造した「準国産機」でもある。

 技術の粋を集めたハイテク機だけに、今後も従来機では想定されないような不具合が発生する可能性は否定できない。

 今回のトラブルを教訓とし、日米欧のメーカーや航空会社、航空当局が密接に連携し、速やかに対応する体制を求められよう。