尖閣諸島 海も空も中国への警戒強めよ

 中国の危険な挑発に対し、海空両面での警戒監視活動を強化する必要性が一段と高まった。

 沖縄県尖閣諸島沖の領海に23日、中国の海洋監視船8隻が相次いで侵入し、約12時間も航行を続けた。昨年9月の尖閣諸島国有化以来、中国公船の領海侵犯は40件、延べ約130隻に上る。8隻同時は最多だ。

 中国は、現場海域にいた日本漁船の「侵害行為」に対する「法執行だ」と領海侵犯の正当化を図ったが、到底容認できない。

 安倍首相は「絶対に上陸させないという強い決意で、物理的に対応していくことが正しい対応だ」と強く牽制した。領海侵犯が続く場合は公務員駐在などの対抗措置をとる可能性も示唆している。

 中国政府は3月、農業、公安両省など複数機関による海上取り締まり任務を国家海洋局の下に一元化した。今回、海洋監視船の領海侵犯に合わせて、周辺の接続水域内を漁業監視船2隻が航行したのも、一元管理の表れだろう。

 今後、大量の監視船の領海侵犯が再発し、侵犯時間も長くなることが予想される。海上保安庁は対処能力を拡充し、海上自衛隊とも緊密に連携する必要がある。

 緊迫の状況は海に限らない。

 2012年度の中国機に対する航空自衛隊の緊急発進(スクランブル)は過去最多の306回に上った。前年度の約2倍で、初めてロシア機への発進を上回った。

 緊急発進の対象は、戦闘機など中国空軍機が大半を占め、尖閣諸島北方空域に集中している。

 中国政府が領土・海洋権益への強硬姿勢を公言する以上、日本政府は事態の中長期化を覚悟して、対策に本腰を入れるべきだ。

 政府は今年末に防衛大綱を見直す。その中で、部隊の機動性を重視する「動的防衛力」を強化し、沖縄方面の艦船・航空機や要員の増強に優先的に取り組まねばならない。無人偵察機グローバルホークの導入も前倒しが必要だ。

 一方で、日中間の緊張をいたずらに高めることは避けたい。今年1月の中国海軍艦艇によるレーダー照射事件のような不測の事態や事故を防ぐためのルール作りを進めることが大切だ。

 日中の防衛当局は昨年6月、海上連絡メカニズムの構築で基本合意した。部隊間のホットラインを開設し、艦艇・航空機が国際緊急周波数で無線連絡する仕組みだが、まだ実現していない。

 まずは、この合意を実行に移し、部隊間の信頼関係の醸成を図ることが重要である。