観光立国推進 もっと高めたい日本ブランド

 外国からの来訪客を増やし、経済成長につなげる。観光立国ニッポンの実現へ、官民一体の取り組みが不可欠だ。

 政府が観光立国の推進に力を入れている。安倍首相を議長とする閣僚会議を発足させた。省庁横断で総合的な観光政策を検討し、夏までに行動計画を策定する方針を打ち出した。

 海外から観光やビジネスの客を呼び込めば、消費が活性化し、雇用も生まれて地域振興が期待できる。観光立国に異論はない。

 ただ、政府は2003年に開始した「ビジット・ジャパン・キャンペーン」など様々な施策を講じてきたが、十分な成果を上げているとは言い難い。

 経済成長著しいアジア中間層の海外旅行ブームに支えられ、12年の来日客は837万人で、東日本大震災前の水準にほぼ回復した。03年と比べると6割増えた。

 それでも、外国人客を16年に1800万人まで拡大するという政府目標には遠く及ばない。

 11年の国別外国人誘客数は、中国(3位)、マレーシア(9位)、タイ(15位)、韓国(25位)と比べ、日本は39位と低迷している。震災の影響があったとは言え、深刻に受け止めねばならない。

 ライバルのアジア主要国は、観光を自国のイメージアップ戦略に位置づけ旅行客誘致に懸命だ。

 観光は交通、宿泊、外食、流通など幅広い分野にまたがる。省庁の縄張り意識を改め、事業の内容や民間との連携を練り直す必要がある。観光庁は、もっと積極的に戦略づくりを主導すべきだ。

 おもてなし文化や四季折々の自然など「地域の宝」は多いのに、生かし切れていない。

 行政主導型の総花的で無難な観光キャンペーンより、民間の知恵を生かした地元ならではの価値を提供する方が効果的だろう。

 最近の外国人客は個人旅行が増え、パソコンや携帯電話を利用した情報収集が一般化している。

 旅行業界は、料金や施設、サービス内容の発信力を向上させ、無料でネット接続できる場所を増やすなど、外国人が気楽に旅行できる環境整備に努めてほしい。

 波及効果の大きい国際会議の誘致、健康診断や治療を目的とする医療観光の推進も有望だ。

 日本観光の底上げには、生産性の低い宿泊業を始めとする観光産業の育成も急務と言える。

 国や地域を超えた出会いを生む観光は、日本の国家ブランドを高め、日本社会のグローバル化を示す重要な指標である。