中国国防白書 危険過ぎる習政権の強軍路線

 中国の習近平政権が、「強軍路線」を推進していく姿勢を改めて強調した。核となるのは「海洋強国化」である。

 中国は2年ぶりの国防白書で、「海洋強国の建設は国家の重要な発展戦略であり、断固として海洋権益を守ることが軍の重要な職責だ」と明記した。海軍が国家海洋局の監視船などと連携を強めていく方針も打ち出した。

 昨年、初の空母を就役させたことについて、「強大な海軍の建設と海上安全保障にとって深遠な意義がある」と指摘した。新たな空母建造など海軍力の増強を加速させるのは間違いない。

 日本として、中国の海洋への膨張は警戒すべき動きだ。

 看過できないのは、沖縄県尖閣諸島を巡って、白書が「日本が問題を作り出した」と名指しで非難したことだ。南シナ海で中国と対立するベトナムやフィリピンは国名を挙げていない。

 日本を際立たせたのは、軍事面で圧力を強め、尖閣の実効支配を切り崩す狙いがあるのだろう。

 日本政府が「中国独自の主張に基づく言動は一切受け入れられない」と抗議したのは当然だ。

 尖閣周辺海域では中国海軍艦艇の示威行動がすでに活発化している。白書発表翌日の17日も、駆逐艦フリゲート艦が航行した。

 海軍艦艇と監視船が一体となった挑発行動の活発化が懸念される事態だ。日本は米国と協調し、海上保安庁自衛隊の連携も深め、警戒に当たらねばならない。

 習近平中国共産党総書記は「中華民族の偉大な復興の夢とは強軍の夢だ」と語っている。

 1月には海自艦艇へのレーダー照射事件が起きた。習氏の強硬な姿勢は、中国軍のさらなる過激な行動を招きかねない。

 習氏は今月9日、海南島の海軍基地で最新鋭の揚陸艦などを視察し、「強軍の目標を心に刻み、その実践に身をささげよ」と命じた。危惧すべき発言である。

 中国は今回の白書について、陸海空軍など兵員数の内訳を公開したと自賛している。だが、核戦力を担う戦略ミサイル部隊や、武装警察部隊の規模などは一切明らかにしなかった。

 2年前の前回の白書に比べ、分量も大幅に減った。兵員生活費や装備費など国防費の内訳に関する記述もなくなった。

 国防費の膨張が国際社会に脅威を与えているのに、その自覚が感じられないではないか。

 隠蔽ではなく、透明性の向上こそが大国としての責任である。