コンビニの隆盛 地域と共存目指す成長戦略を

 安倍政権が掲げる経済政策「アベノミクス」を追い風に、景気回復への期待が高まっている。

 コンビニエンスストア業界も新たな消費を掘り起こし、日本経済の活性化につなげてもらいたい。

 セブン―イレブン・ジャパン、ローソン、ファミリーマートの大手3社は2013年2月期にそろって売上高を伸ばし、最高の営業利益をあげた。

 1974年に都内に初登場したコンビニは現在、全国約5万店に達する。業界全体の売上高は9兆円を超え、百貨店の6兆円を大きく上回る。年間来客数は約150億人で、日本人1人あたり年100回以上利用する計算だ。

 長期低迷が続く百貨店やスーパーを尻目に、生活に深く根付いたコンビニが小売業界を引っ張っていることを示す。

 その強さの秘訣は、消費の移り変わりをいち早く察知し、事業を広げてきた柔軟さにある。

 「売れ筋」を重視した商品構成と在庫管理、少量多頻度の配送システムなどが急成長を支えた。

 おにぎりや弁当が中心だった品揃ぞろえは、生鮮食品、総菜、いれたてコーヒー、医薬品などに広げ、他業種の分野に踏み込んでいる。低価格の自主開発商品を相次いで投入し、なじみの薄かった主婦や高齢者の利用も増えた。

 公共料金の納付、宅配便、ATM、チケット販売など物販以外のサービスも伸びている。

 ただ、国内店舗数が飽和状態に達したとの見方は強い。巻き返しを狙う百貨店、スーパーやネット通販も含めた競争が激化し、経営環境は厳しさを増すだろう。

 これからが正念場である。

 積極的な出店は都市部が優先されがちだった。地方圏での事業展開が課題の一つではないか。

 ご当地メニューなどで独自色を打ち出している店は多いが、必要とされる商品やサービスをさらに見極めて提供し、地域と共存できるかどうかが問われよう。

 身近な商店が消え、遠出したくても交通手段のない「買い物弱者」は多い。採算一本やりではない地域貢献も求められる。

 東日本大震災では、被災地の生活復旧に大きな役割を果たし、コンビニの公共性が注目された。

 効率性と合理性を重視する姿勢が、仮設店舗や移動販売車などの素早い展開に生かせた。

 災害時の物資調達や帰宅困難者支援など、いつでも頼れる社会のインフラとしての機能をさらに高めることが欠かせない。