G20共同声明 円安だけに頼れぬデフレ脱却

 日本の大規模な金融緩和策は円安誘導ではないとして、先進国と新興国の理解を得られたことは前進である。

 デフレ克服と着実な日本経済再生へ、政府と日銀は一段と重い責任を負った。

 日米欧と中国、ロシアなど主要20か国・地域(G20)財務相中央銀行総裁会議がワシントンで開かれ、共同声明を採択した。

 声明はまず、焦点だった日本に言及した。就任したばかりの黒田東彦日銀総裁が打ち出した量的・質的金融緩和策について、「デフレを止め、内需を支えることを意図したものだ」と明記した。

 「異次元」の金融緩和策を受けて急激に円安が進み、韓国などが日本を牽制していた。

 しかし、金融緩和策はあくまで脱デフレが目的で、輸出拡大を意図した円安誘導ではない。こうした日本の主張が、一定の理解を得られたと評価できよう。

 声明は、マイナス成長が続く欧州の信用不安再燃などを踏まえ、「世界経済の成長は引き続き弱すぎる」と厳しい認識を示した。

 各国・地域が危機感を共有し、日本の成長強化が世界経済にも有益だと一致したことも、日本への理解につながったようだ。

 ただし、前回2月のG20声明に盛り込んだ「通貨安競争の回避」を再確認した点は重要だ。

 ひとまず新興国などからの円安批判は避けられたものの、日本が金融緩和策や円安進行に頼るだけでは批判が再燃しかねない。

 日本は今後も経済再生策への理解を求め、速やかに脱デフレの成果を出すことが問われよう。

 金融緩和、財政政策に続く「3本目の矢」である成長戦略として、安倍首相が若者の能力向上、女性活用、医療産業育成を第1弾とする方針を示した。これを機にさらなる戦略をまとめてほしい。

 日米欧の金融緩和策に関連し、声明が「意図せざる負の副作用に留意する」と強調した点も重く受け止めたい。

 新興国では、先進国の金融緩和であふれた投機資金が新興国の金融市場などの過熱を招いているという不満がくすぶる。日本は米欧などと連携し、副作用の拡大を警戒する必要がある。

 日本の課題として、声明が「信頼に足る中期財政計画を策定すべきだ」と注文したのは当然だ。

 日本の財政は先進国最悪の状況である。当面は財政刺激策による経済再生を優先するにしても、中期的な財政再建を怠って信認が揺らぐ事態を避けねばならない。