ネット選挙へ 「悪意」の発信をどう防ぐか

 日本でもようやくインターネットを利用した選挙運動が解禁される。若者に政治参加を促す効果が期待できよう。

 公職選挙法改正案が参院の特別委員会で全会一致で可決された。きょう成立し、夏の参院選から適用される。

 法案は、ホームページやブログのほか、ツイッターフェイスブックなどによる公示・告示後の選挙運動を可能にする。

 多くの先進国がネット選挙を認めている。2008年米大統領選で、オバマ氏は情報発信や有権者との対話に駆使して若者に支持され、「選挙革命」と呼ばれた。

 日本は、周回遅れではあるが、有権者に適切な判断材料を提供し、投票率を向上させる手段として新制度を活用すべきである。

 政党や候補者は、従来のように選挙カーで名前を連呼し、ビラを配るだけでは済まされない。短時間の街頭演説では伝えにくい経済や安全保障政策についてもネットで丁寧に訴える必要がある。

 有権者のメリットは、政党や候補者の主張を詳しく知ることができる点だ。候補者とネット上で対話することや、候補への支持をツイッターなどで広く呼び掛けることも可能になる。

 ただし、電子メールを使った選挙運動は悪用されやすいため、政党と候補者に限定された。慎重を期して、全面的な解禁を避けたのは、妥当な判断である。

 与野党は具体的な運用指針を作成中だ。候補者と有権者双方に混乱が生じないよう、制度の周知徹底を図ってもらいたい。

 課題は、特定候補の落選を狙った誹謗中傷や、候補者本人を装ってウソの主張をする「なりすまし」をどう防ぐかである。

 悪質なケースは名誉毀損罪や公選法の虚偽表示罪に問われるとはいえ、ネット情報は急速に拡散し、完全に消去するのは難しい。

 法案は、ウェブサイトやメールによる選挙運動を行う際にメールアドレスなど連絡先の表示を義務づけた。表示がなければ、プロバイダー(接続業者)は削除することができる。悪質な情報の発信に一定の歯止めにはなる。

 ネットでの情報を監視し、反論、差し止めをする責任は政党と候補者が担う。公的な監視機関を置くかどうかは検討課題である。

 昨年の韓国大統領選では、中央選挙管理委員会の「サイバー選挙不正監視団」が7000件超の不適切なネット投稿を削除したという。日本でも、こうした機関が必要になるかもしれない。