スー・チー来日 官民連携で国造りを支えたい

 ミャンマーの最大野党である国民民主連盟(NLD)の党首アウン・サン・スー・チー氏が日本政府の招きで来日し、安倍首相や岸田外相らと相次いで会談した。

 スー・チー氏の来日は、民主化運動に身を投じる前の1980年代半ば、京大客員研究員として滞在して以来27年ぶりだ。

 スー・チー氏は軍政と対立し、約15年間も自宅軟禁を強いられていた。今回の来日実現は、2年前の民政移管後、テイン・セイン政権が推進しているミャンマー民主化を象徴するものだ。

 日本政府はこれまで、テイン・セイン政権の改革を歓迎し、円借款など政府開発援助(ODA)の再開を欧米に先駆けて決めるなど積極的に支援してきた。

 NLDとの関係を強めるのは、議会内で健全な野党が育つことがミャンマーの一層の民主化と社会の安定につながるとの判断があるからだ。2015年の総選挙でNLDが勢力を拡大しそうだという背景もある。

 安倍首相は会談で、「改革が一層進展するよう支援していきたい」と述べ、ODAと民間投資の両面でミャンマーの国造りを支える日本政府の方針を説明した。

 スー・チー氏も「発展に協力してほしい」と語り、職業・農業教育などでの支援を求めた。

 スー・チー氏は昨春の下院議員当選以来、在野の民主化運動指導者から現実的な政治家への脱皮を図っている。支持者の期待に応えるには、生活水準の向上など具体的な成果を必要としていよう。

 ミャンマーの国造りの道のりは険しい。さらなる民主化には、スー・チー氏が訴える通り、軍の政治的影響力を保証するために定められた議会の軍人枠の撤廃など、憲法の改正が避けられまい。

 対立が続く少数民族との関係改善も難航し、国民和解の道筋はまだ見えない。治安悪化は日本企業の投資熱に水を差しかねない。

 日本は最大の経済支援国だ。少数民族の生活の底上げや、道路や電力の整備など社会の安定に寄与する開発支援に、官民が連携して取り組む意義は大きい。

 インド洋と南シナ海を結ぶ要衝に位置するミャンマー戦略的価値は高まる一方だ。ミャンマーは軍政時代の中国一辺倒の外交から転換し、日本や米国、インドとの関係を強めつつある。

 軍事・経済両面で膨張し、影響力を増大する中国を牽制せいする上でも、ミャンマーとの関係を深めることが日本には重要である。