党首討論 手詰まり感漂う海江田民主党

 株価の急上昇と高い支持率で余裕すら感じられた安倍首相と対照的に、民主党の海江田代表の追及は迫力を欠いた。

 これでは国会論戦に緊張感は生まれまい。

 第2次安倍内閣で初めての党首討論が行われた。

 海江田氏は、経済政策「アベノミクス」による大規模な金融緩和が物価高を招き、年金生活者らが困窮するという副作用があると指摘した。政府が検討中の規制緩和に伴う企業のリストラ拡大についても懸念を示した。

 首相は、物価が上がれば、年金額も連動して上がり、いずれ労働者の賃上げにも及ぶと強調した。「この3か月で4万人の雇用を作った。民主党政権が出来なかったことだ」と切り返した。

 安倍政権発足以来、超円高が是正され、株高も続いている。

 懸念を言い募るだけでは建設的な討論にならない。自分ならデフレ脱却や経済成長に向けてどんな手を打つのか、海江田氏は具体的な対策を提示すべきだろう。

 安倍首相は、先手を打つように、衆院小選挙区定数の「0増5減」を実現する区割り法案に言及した。「国民の声は『1票の格差是正を進めよ』だ。立法府の一員として応える責任がある」と、先行処理への協力を求めた。

 海江田氏は「定数削減が一番大きな約束だ」と主張したが、これは筋違いと言わざるを得ない。

 民主党は昨年11月に成立した0増5減の選挙制度改革法に賛成した。それに従った区割り法案を差し置き、抜本改革を唱えても与野党が合意できる状況ではない。

 民主党は0増5減では格差是正が不十分として議員定数小選挙区で30、比例選で50削減する法案を国会に出したが、他の野党は同調していないではないか。

 民主、日本維新の会、みんな、生活、社民の野党5党は与党が区割り法案を特別委員会に付託したことに反発して17日、審議拒否した。こうした態度は党利党略を優先し、1票の格差是正をなおざりにする姿を印象づけるだけだ。

 党首討論で、維新の石原共同代表は憲法改正の必要性を力説し、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉では食品の安全性確保で米国に譲歩しないよう注文した。

 みんなの渡辺代表は、TPP交渉参加の決断を高く評価したうえで、公務員制度改革を促した。

 対決姿勢の民主党とはスタンスの違いがうかがえる。党首討論は、与党に対する野党の距離感も浮き彫りにしたと言えよう。