ケリー長官来日 対中朝で日米連携を強化せよ

 北朝鮮の瀬戸際戦術や中国の威圧的な外交に効果的に対応するには、日米両国が連携を一段と強化することが重要だ。

 ケリー米国務長官が来日し、安倍首相、岸田外相と個別に会談した。北朝鮮弾道ミサイルの発射の自制を求めるとともに、北朝鮮の核保有を容認せず、非核化に向けた具体的な行動を促す方針で一致した。

 意図的に危機を高めたうえ、交渉を通じて経済支援を得ようとするのは北朝鮮の常套手段だ。「北朝鮮が挑発行為を繰り返しても、何ら利益にならないことを理解させることが必要だ」との安倍首相の指摘は適切である。

 日米両国は、ミサイル防衛など軍事的な備えを怠らない一方、恫喝には過剰に反応せず、対北朝鮮制裁措置を着実に実施するなど、冷静かつ断固たる対応を継続しなければなるまい。

 北朝鮮に一定の影響力を持つ中国が前向きな責任を果たすよう、働きかけることも大切だ。

 ケリー長官は講演で、「米国は実現性のある真剣な非核化交渉の用意がある」と強調した。

 北朝鮮に核開発を断念させるのは簡単でないが、国際社会は追求し続けるべきだ。北朝鮮がいずれ6か国協議の再開などの対話路線に戻ることもあるだろう。

 その際、北朝鮮の具体的行動がないままでの経済支援は禁物だ。北朝鮮の威嚇外交を奏功させないよう、日米中韓4か国が慎重に政策をすり合わせる必要がある。

 ケリー長官は日米外相会談で、尖閣諸島について「一方的、強制的に現状を変えるような行動に反対する」と明言した。

 1月のクリントン前長官の発言と同様、日本の実効支配を中国が実力で変更することを明確に否定した意義は大きい。日本側の事前調整の成果と言える。

 強引な公船の派遣などで領有権や海洋権益の拡大を図る中国の手法を通用させてはならない。中国に国際法とルールを順守させることが国際社会にとって共通の課題であると、日本は粘り強く訴えていくことが重要である。

 ケリー長官の2月の就任以来3回目となった日米外相会談では、普天間飛行場辺野古移設、在沖縄海兵隊のグアム移転など在日米軍再編や、日本の環太平洋経済連携協定(TPP)交渉参加を着実に進めることも確認した。

 北朝鮮、中国政策での日米協調を高めるためにも、頻繁な対話を通じて、日米間の課題を前進させることが求められる。