教育委員会改革 機能の立て直しをどう図るか

 安倍首相直属の教育再生実行会議が、教育委員会制度の抜本的な改革を求める第2次提言をまとめ、首相に提出した。

 提言は、自治体の首長が議会の同意を得て任命する教育長を、教育行政の責任者として明確に位置づけた。首長には教育長の罷免権も付与した。

 首長から独立し、有識者など複数の教育委員の合議で意思決定を行ってきた現行の教委制度の転換を図る内容と言える。

 大津市のいじめ自殺事件などの対応を巡り、各地で教委の機能不全が露呈している。政府は提言内容について、中央教育審議会でさらに検討を重ねる方針だ。

 地方の教育行政の立て直しにつなげてもらいたい。

 現行制度では、教育委員会の中に、代表者である教育委員長と、実務を統括する教育長が併存しており、責任の所在があいまいだとの批判がある。

 教育長以外の委員は非常勤で、会議も月に数回程度しか開かれない。このため、審議が形骸化し、いじめや体罰など重大事案が起きた際、迅速な対応がとれないという弊害も顕在化していた。

 教育長に責任と権限を一元化することで、こうした問題点を是正し、教育行政の機動性を高めようとする狙いは理解できる。

 新たな教育長には、教職員人事や教科書採択などの権限が集中することが想定される。教育長が偏った方針の下で暴走しないよう、その業務をチェックする仕組みが不可欠だ。

 提言が、教育委員会を廃止せずに存続させたのは、まさにそのためである。教育長が基本方針などを決める際には、教委で審議することを求めている。

 新たな教育委員会が教育行政に対する監視機能を果たすには、委員の任命方法も重要となる。

 首長が教育長の任免権を持つことにより、教育行政の政治的中立性が十分に確保できるかという問題もある。従来に比べ、首長の意向がより強く反映されるようになるのは間違いない。

 首長が自らの政治的信条に合致しているというだけの理由で、教育行政の見識に欠ける人物を教育長に据えるといった事態は生じないだろうか。

 首長が選挙で代わるごとに、教育の目標や方針が大きく変更されるようになれば、学校現場の混乱は避けられまい。

 教育委員会の在り方は変わっても、教育行政の安定性や継続性を保つことが肝要である。