災害支援―人材バンクをつくろう

 のべ116万人。

 東日本大震災でボランティアに赴いた人の数である。これは各地の窓口をへた人だけで、実際にはもっといる。

 がれきを運ぶような力仕事だけではない。産業復興や情報発信。ノウハウのいる分野で活躍する長期ボランティアも多い。

 いつどこを襲うとも知れない大災害に備え、そうした人たちの人材バンクをつくれないか。

 この11月、宮城県南三陸町の漁協と県内の居酒屋チェーンが海産物の取引を始めた。

 両者をつないだのは、震災直後から活動を続ける沖縄からの支援者。ボランティア仲間のつてをたどり、販路を見つけた。

 町の災害ボランティアセンターでも、長期の支援者がホームページやセンターの運営に携わる。社会福祉協議会は、本来の業務を抱えながらセンターを営んでいる。外の力は大きい。

 仮設住まいの人たちの心のケアなど、知識や経験をもつ人が長いこと支援してこそ効果が出る分野はほかにもある。

 南三陸の猪又隆弘・災害ボランティアセンター長(54)は、こんな提案をしている。

 センターを営んだ各地の社協から、力を発揮したボランティアを推薦してもらい、人材バンクをつくるべきだ。そうすれば、次に災害があったときすぐ派遣できる――。

 被災地支援の経験者らをセンターに派遣して支える制度は、震災前からある。阪神大震災中越地震をうけて、中央共同募金会が中心になってつくった。ただ、震災が大きすぎて十分な人材は送れなかった。

 NPO社協の人だけでなく今回活躍した個人ボランティアを含む幅広いネットワークを、新たにつくってはどうか。社会の共有財産になるだろう。

 被災地で長く活躍するには、生活や仕事の心配をしなくてすむ環境が欠かせない。

 現地で重宝され、本人も活動を続けたいが、会社の理解が得られない。生活費がもたない。そんな理由でやむなく帰ったボランティアもいる。

 経団連によると、短期のボランティア休暇の制度は会員企業の半分以上がもっているが、月や年単位のボランティア休業制度があるのはまだ2割だ。

 一方で、業務の扱いで社員を送り出した企業や、復興支援のNPOに社員を派遣した企業もある。被災地での経験は本業でも力になろう。意欲のある社員を制度で後押ししてほしい。

 南海トラフや首都直下の巨大地震もいつか来る。東北の経験を共有すべきだ。