教育政策 高校無償化の見直しは妥当だ

 安倍首相が改革に意欲を見せる教育分野で、早くも独自のカラーを出したということだろう。

 民主党政権が結論を先送りしてきた朝鮮学校に対する高校授業料の無償化適用について、安倍政権が適用を見送る方針を決定した。

 その理由として、下村文部科学相は、日本人の拉致問題に進展がないことに加え、朝鮮学校の財務や教育内容が、北朝鮮と結びつきの強い在日本朝鮮人総連合会の影響下にある点を挙げている。

 民主党政権下で策定された判断基準に沿って、文科省が審査を続けてきたが、これとは別に、安倍政権として判断したという。

 無償化が適用されると、日本の高校にあたる「朝鮮高級学校」10校に、授業料分として年約2億円の就学支援金が支給される。

 確かに、就学支援金が授業料以外に流用される恐れや、事実と異なる内容の教育が行われる懸念が払拭できない限り、国費投入に国民の理解は得られまい。

 高校無償化に関しては、下村文科相が、2014年度以降、制度を見直し、対象に所得制限を設ける方針を明らかにしている。

 高校無償化は「社会全体で子供を育てる」という理念を掲げた民主党政権の目玉政策の一つだった。だが、家計に余裕のある層まで一律に対象としたため、「ばらまき」との批判が根強かった。

 高校生は授業料以外にも学用品購入費などの負担が多い。所得制限によって無償化の対象を絞り込むことで財源を捻出し、低所得者層の支援に活用するという安倍政権の考え方は理解できる。

 教育分野で早急な対策が求められるのは、いじめ問題だ。

 今夏以降、各地で深刻ないじめが表面化した。大津市でいじめを受けた男子中学生が自殺した事件では、元同級生3人が、暴行などの容疑や非行事実で書類送検児童相談所送致となった。

 相手を思いやる気持ちの欠如が、いじめを生んでいる。安倍政権が道徳教育の強化を打ち出したのは当然だ。学校の授業や地域での職場体験などを通じ、規範意識や公共性を育む必要がある。

 「いじめ防止対策基本法」の制定も検討されている。法制化を通じて、「絶対にいじめを許さない」という意識を社会全体で共有する意義は大きい。自治体や学校に具体的な取り組みを促す効果も期待できるのではないか。

 大津の事件で機能不全が露呈した教育委員会の在り方についても政府内で議論を進めてほしい。