次官連絡会議 真の「政治主導」を確立したい

 安倍政権が目指す「政治主導」の仕組みとルールが固まりつつある。

 政治家と官僚が連携して、迅速に政策を決定、実行する体制を築かなければならない。そのためには、民主党政権で損なわれた政と官の関係修復が不可欠である。

 安倍首相は、各府省の事務方トップを集めた「次官連絡会議」の初会合で「政官相互の信頼関係に基づく真の政治主導を推進する必要がある」と強調した。

 連絡会議は毎週金曜日の閣議後に開かれる。閣議が決めた方針に沿って、各府省が情報を共有し、具体策を検討する場となる。

 民主党政権は次官会議を廃止するなど、官僚を政策決定から排除した。その結果、官僚が萎縮して「指示待ち」の状態に陥り、政府の機能は著しく低下した。

 安倍首相が次官を通じて政府内の連携を図ろうとする姿勢は理解できる。野党的感覚で官僚を信頼しなかった民主党の誤った政治主導を是正するのは当然である。

 政府が閣僚懇談会で申し合わせた「政・官の在り方」とする文書は、官僚が基礎データや政策の選択肢を複数提示し、政治家は政策決定に責任を持つとしている。

 政治家と官僚が役割を分担し、協力し合わなければ、危機管理や災害対応などで政府が総力を挙げることはできない。

 民主党政権が廃止した次官の記者会見を復活させるのも妥当だ。本来、官僚が記者会見での実務の説明を通じて閣僚を補佐することは何の問題もなかった。

 一方、自民党は、政府提出法案などに関し、政務調査会の各担当部会と、総務会が事前に審査・了承する手続きを再開する。税制も党税制調査会がリードする。

 こうした党主導の意思決定は、関連する業界や地元の意見を反映しやすい反面、その意向に政策がゆがめられる恐れもある。各部会の利害が対立する場合は、迅速な政策決定が難しい。

 その一つが環太平洋経済連携協定(TPP)への態度決定だ。

 農協などが強く反対し、外務、経済産業両省と農林水産省も対立している。関係議員間の利害調整ができなければ、政府はTPP参加を決められまい。

 国益にかかわる重要政策は、経済財政諮問会議などの場で大所高所から議論して、首相官邸主導で決断すべきである。

 政府・与党の協議機関として、「政府・与党連絡会議」も設置される。自民、公明両党は緊密な意思疎通を心掛けてもらいたい。