2012回顧・日本 再生への希望が芽生えた年
明るい話題に、希望や勇気をもらった人が多かったのだろう。
読売新聞の読者が選ぶ今年の「日本10大ニュース」の1位は、「ノーベル生理学・医学賞に山中教授」だった。
「東京スカイツリーの開業」が2位、「ロンドン五輪、史上最多のメダル」が3位に入った。
山中伸弥京都大教授が開発したiPS細胞(人工多能性幹細胞)は、傷んだ臓器などの再生医療を実現へ大きく動かした。「まだ一人の患者も救っていませんから」。受賞が決まった後の山中氏の謙虚で誠実な姿勢も好感を呼んだ。
東京スカイツリーは5月の開業から半年で約2800万人の入場者を集めた。634メートルは自立式電波塔では世界一の高さだ。東京タワーが高度成長の象徴ならば、スカイツリーはどんなシンボルとして親しまれていくのだろうか。
ロンドン五輪で日本選手団は、金7個を含む38個のメダルを獲得した。レスリングの吉田沙保里選手、伊調馨選手が五輪3連覇を達成した。なでしこジャパンのサッカー、バレーボール、卓球など女子選手が見事な活躍を見せた。
プロ野球の「巨人3年ぶり22度目の日本一」は8位に入った。
その巨人の主砲を長く務めた松井秀喜選手が27日、引退を表明した。巨人や米大リーグ・ヤンキースなどで507本塁打を放ち、ワールドシリーズの最優秀選手にも選ばれた。豪快な打撃はファンの心に深く刻まれよう。
安倍内閣の発足につながる「師走の衆院選挙」は4位だった。民主党は、野田前首相が社会保障と税の一体改革(16位)と引き換えに、「近いうち解散」に打って出た末の惨敗だった。3年3か月に及んだ民主党政権が終わった。
米軍普天間飛行場移設の問題などで迷走し、民主党の政権公約(マニフェスト)も破綻した。政権担当能力に欠けると多くの有権者は判断したのだろう。
安倍首相には、現実的な政策の立案・実行と安定した政権運営が求められる。
尖閣諸島の国有化による日中関係の悪化も、5位と関心が高かった。中国では反日デモが暴徒化し、日本企業が襲われた。関係の改善は安倍内閣の重要課題である。
12月には中央道の笹子トンネル(山梨県)の天井板が崩落し、9人が死亡する大惨事が起きた(7位)。老朽化したインフラ(社会基盤)の改修も急ぎたい。
日本が確実に再生の道へ歩み出す。来年をその節目にしたい。