暴力団排除―福岡での無法を許すな

 暴力団による発砲や住民への襲撃が続く福岡県で、とくに凶悪な三つの「特定暴力団」が指定された。全国で初めてだ。

 これを暴力団を封ずる新しい手立てにし、警察は住民や企業を守らなくてはならない。

 特定暴力団の制度は、暴力団対策法の改正で定められた。以前からある「指定暴力団」のなかから、市民や企業を襲った前歴のある団体などを指定する。

 全国には22の指定暴力団がある。福岡県には全国で最も多い5団体が本部をおく。そのなかの工藤会を福岡、山口両県の公安委員会が「特定危険」の暴力団に指定した。道仁会と九州誠道会は福岡、佐賀、長崎、熊本4県の公安委が「特定抗争」の暴力団に指定した。

 新しい制度では、縄張りを中心とする区域を警戒区域と定める。その区域で、組員が飲食店に用心棒代などを要求したようなとき、それだけで犯罪とみなされる。指定区域で組事務所の新設や抗争相手へのつきまといなども禁止できる。どちらの場合も、違反した場合には直ちに逮捕できる。

 これまでの暴対法では、いったん中止を命令し、それに違反した場合にようやく摘発ができた。今後は、犯罪を早く止められるようになる。

 新しい仕組みが地域の安全に役立つためには、通報する住民の協力が欠かせない。

 住民は暴力団から報復される恐れを知りながら捜査に協力することになる。警察が守り抜かなくてはならない。

 福岡県内では昨年以降、22件の発砲事件が起きた。しかし、容疑者が逮捕されたのは3件だけだ。

 福岡県では今年、飲食店に組員の立ち入りを禁ずるステッカー(標章)を掲げる制度が始まった。その後、北九州市などで標章を使った飲食店主らが顔を切りつけられる事件や、店への不審火が相次いでおきた。このような住民への加害事件も未解決が多い。

 県警は、標章がなくても店に立ち入った組員を取り締まれるようにする暴力団排除条例の一部を改める検討をしている。その改正も急ぐけれど、不安な思いの飲食店主らを保護することは、さらに大切だ。

 20年前に指定暴力団の制度ができたときも注目されたが、決め手にならなかった。制度も大切だが、警察が確実に守ってくれるという信頼を保てなくては暴力団を抑えられない。

 凶暴な犯罪が続く福岡で、警察はまず、安全を取り戻す実績を示さなくてはならない。