安倍外交 日米「基軸」で隣国関係改善を

 ◆同盟強化へ防衛指針を改定せよ◆

 3年余の民主党政権下で大きく後退した日本外交をどう立て直すのか。

 安倍内閣が全力で取り組むべき重要課題だ。

 安倍首相は来月中にも米国を訪問し、オバマ大統領と会談する。日米同盟の強化が、中国、韓国など近隣国との関係を再構築する第一歩と考えるからだ。

 鳩山元首相が米軍普天間飛行場の移設問題を迷走させ、日米同盟を混乱させた。その間隙
かんげき
を突くように、中国、韓国、ロシアが領土問題で日本を揺さぶった――。多くの外交関係者の共通理解だ。

 ◆安保課題の工程表作れ◆

 問題は、日米同盟を強化する具体策である。自民党衆院選政権公約に、集団的自衛権の行使容認や防衛協力指針(ガイドライン)再改定などを盛り込んだ。

 いずれも実現すべき安全保障の課題である。一つひとつに優先順位をつけ、着実に取り組むことが同盟関係をより強固にしよう。

 10年連続で減少している防衛費の拡充は急務だ。来年度予算編成で考慮する必要がある。

 自衛隊と米軍の防衛協力を強化するガイドライン再改定についても、日米協議を早期に開始し、具体的な検討に入りたい。

 衆参ねじれ国会の下、首相が創設に意欲を見せる国家安全保障会議(日本版NSC)の関連法案の成立は簡単ではない。だが、民主党も同様の構想を持つ。与野党協議を呼びかけてはどうか。

 集団的自衛権の問題は、公明党内閣法制局との調整が難関となる。来夏の参院選後の実現を目指し、まずは与党内でしっかりと議論を深めるのが現実的だろう。

 安倍首相の訪米時には、環太平洋経済連携協定(TPP)参加問題が重要議題となろう。日本の国益を確保するため、極力早期に交渉参加を決断すべきだ。

 長年の懸案である普天間問題も正念場を迎えている。

 普天間飛行場の代替施設の建設には、沖縄県仲井真弘多知事の埋め立て許可が不可欠だ。地元関係者の理解を広げ、「県外移設」を主張する知事が翻意しやすい環境を整えることが大切である。

 日中両国は、今年9月の尖閣諸島の国有化以降、険しい対立関係にある。中国政府船が連日、尖閣諸島周辺で示威活動を繰り返す異常な状況が続いている。

 ◆中国と「互恵」を再構築◆

 無論、日本は、尖閣諸島の領有権に関しては一切の譲歩をすべきではない。ただ、この問題だけで日中関係全体が停滞することは、双方にとって大きな損失だ。

 安倍首相は6年前の訪中で、靖国神社参拝問題に明確な結論を出さずに、「戦略的互恵関係」を目指すことで中国と一致した。解決が困難な外交問題も、より大きな交渉の一部に包含することで、打開できる道はあるはずだ。

 今回も、例えば、尖閣問題は継続協議にしておく一方、戦略的互恵関係を追求することで習近平指導部と包括的な合意を図るなど、知恵を絞らねばならない。

 そのため、自民党が政策集の検討項目に掲げた尖閣諸島での「公務員の常駐」などの強硬策は当面、棚上げにするのが現実的だ。

 安倍首相が領土問題などで掲げる「主張する外交」は、「主張しない外交」と比べれば、はるかに良いが、主張すること自体が目的化しては意味がない。

 目指すべきは、時には静かに解決策を模索するなど、硬軟両様で「結果を出す外交」である。

 韓国との関係の改善も、急がなければならない。

 竹島訪問を強行した李明博大統領から朴槿恵氏への交代は、その好機である。安倍首相が特使の派遣を検討しているのは妥当だ。

 核開発を進める北朝鮮や、軍事大国化する中国に効果的に向き合うには、米国に加え、韓国との緊密な連携が欠かせない。

 ◆新政権で「拉致」進展を◆

 日朝関係は、今月の北朝鮮弾道ミサイル発射で、予定されていた局長級協議が延期された。

 膠着
こうちゃく
状態にある日本人拉致問題の前進には、日本が交渉に値する相手だと北朝鮮金正恩第1書記に確信させることが不可欠だ。

 混乱が続いた民主党政権から安倍政権への移行を契機に、「対話と圧力」路線に沿って北朝鮮への働きかけを強めねばならない。

 ロシアについて政府は、来年2月ごろにプーチン大統領と親しい森元首相を派遣し、その後の安倍首相の訪露につなげる考えだ。

 大統領は対日関係を重視し、北方領土問題の解決にも意欲を持っている。様々なレベルで対話を重ね、領土問題やエネルギー協力を進展させることが重要だ。