衆院小選挙区制 得票と議席の差が開き過ぎる

 国民の代表をどう選ぶべきか。

 今回の衆院選の結果を踏まえて、選挙制度を根本から見直す必要があろう。

 自民、公明両党は連立政権協議で衆院選挙制度に関し、定数削減を含む抜本改革を検討することで一致した。両党と民主党による合意に基づくもので、通常国会で協議に入る。

 まずは、現行の小選挙区比例代表並立制の問題点を幅広く洗い出してもらいたい。

 2005年と09年の衆院選に続き、今回も、第1党が300議席程度に達し、第2党以下に圧倒的な差をつけた。

 小選挙区では、自民党の総得票数は民主党の1・9倍だが、獲得議席はこれを大きく上回る8・8倍にも達した。小選挙区制の特徴とはいえ、得票数と獲得議席数の隔たりの大きさに多くの有権者が違和感を覚えたのではないか。

 小選挙区制の長所は、民意を集約することで安定した政権ができやすい点にあるはずだった。

 だが、議席の振れ幅が大きかった過去3回の衆院選を通じて、政権党には、一部の有権者の支持を失えば、次の衆院選で敗北し、下野するリスクが高まっている。

 政権党が有権者や業界団体の反発を恐れ、国論を二分する政策に及び腰になるというマイナス面も顕在化した。環太平洋経済連携協定(TPP)への参加について自民、民主両党が態度を明確にしなかったのは、その一つだろう。

 選挙のたびに「チルドレン」や「ガールズ」とやゆされるような新人が大量当選し、その多くが次回選挙で国会から消えていく。

 激戦区でなくても議員が地元に縛り付けられ、国政をおろそかにする傾向があると言われる。

 比例選出や支持基盤の弱い議員たちは、選挙で生き残ることを優先し、大衆迎合主義(ポピュリズム)的な行動に走りがちで、政治の混乱の一因になっている。

 当選を重ね、専門知識を深めることで、官僚を使いこなせる質の高い政治家が育つ。だが、現行制度は、真の政治主導を実現する妨げになっているのではないか。

 菅前首相のように、小選挙区で敗れたのに、重複立候補した比例選で復活当選する仕組みが今なお続くのも納得しがたい。

 与野党からは、こうした問題点を踏まえ、中選挙区制の復活を求める声も出ている。それも排除すべきではないだろう。

 選挙制度改革には党利党略が絡む。政党同士よりも、有識者による客観的な議論が望ましい。