「普天間」評価書 政権交代を機に移設を進めよ

 自民、公明両党は政権交代を機に、停滞している米軍普天間飛行場の移設問題の前進に全力を挙げるべきである。

 防衛省が、普天間飛行場沖縄県名護市辺野古沿岸部への移設に向けた環境影響評価書の補正作業を完了し、沖縄県に提出した。

 評価書の補正は仲井真弘多知事が示した計579件の意見に対応したものだ。海洋生物の最新調査に基づく評価などを追加し、「可能な範囲で最大限の環境保全措置を取る」としている。

 知事の膨大な注文に、丁寧に回答した内容と言えよう。

 今後、評価書の公告を経て、防衛省が、普天間飛行場の代替施設建設に伴う埋め立てを沖縄県に申請することが可能になる。

 自民党の安倍総裁は、辺野古移設について「地元の理解を得る努力をしたい」と述べたが、仲井真知事は「地元の理解が得られない移設は事実上不可能」と語っている。埋め立ての許可を得られる見通しは立っていない。

 ただ、知事は一昨年秋の知事選まで辺野古移設を容認していた。その後、「県外移設」要求に転じたが、今も反対は明言していない。

 自公政権は、民主党政権の失政で破壊された沖縄県との信頼関係を修復し、移設を容認するよう知事を説得しなければならない。

 人口密集地から過疎地に飛行場を移すことは、県全体として基地負担を大幅に軽減する。名護市長は反対だが、辺野古周辺の自治区が容認している事実は重い。

 辺野古移設が実現すれば、普天間飛行場の跡地を有効利用し、様々な地域振興が可能となる。逆に断念すれば、危険な現状が長期間、固定化されることは確実だ。

 普天間飛行場に配備された新型輸送機オスプレイは安全性が確認されたが、万一、事故が起きた際、市街地よりも辺野古沿岸部の方が被害が小さいのは明らかだ。

 1996年の日米合意以来の懸案を解決することは、中国の軍備増強などで重要性を増す日米同盟の強化にも大いに役立つ。

 仲井真知事は、こうした要素を総合的に勘案してもらいたい。

 重要なのは、新政権が、埋め立てを知事が許可しやすい環境を整えることだ。まず、「県外移設」を唱える自公両党の県組織や地元選出国会議員を説得し、辺野古移設への理解を広げることだ。

 反対・容認に割れる名護市議などの地元対策や、沖縄振興策の拡充を含めた沖縄県との協調関係の再構築も欠かせない。