安倍外交―中韓との修復の転機に

 自民党の安倍総裁が、韓国との関係修復に動き出した。

 額賀福志郎財務相を特使として派遣し、次期大統領に決まった朴槿恵(パククネ)氏への親書を託す意向を表明した。

 さらに、自民党衆院選政策集では、2月22日を「竹島の日」として祝う政府主催の式典を催すと記していたが、来年は見送る方針だ。

 北朝鮮のミサイル発射や、尖閣諸島をめぐる中国との対立を抱えるなか、竹島問題で悪化した日韓関係の改善は日本外交にとって急務である。

 首相就任を前に、安倍氏が打開に向けて行動を起こしたことは評価したい。

 とりわけ竹島の日の3日後には、韓国の大統領就任式を控えている。政府式典を強行すれば、緊張がさらに高まるところだった。見送りは妥当な判断といえよう。

 早期に首脳会談を実現できるよう環境整備を図るべきだ。

 安倍氏はさらに、中国との関係についても「戦略的互恵関係の原点に戻れるように努力していきたい」と語り、改善に意欲を示している。

 総裁選、衆院選を通じ、安倍氏靖国神社への参拝や、尖閣への公務員常駐に言及するなど、近隣外交に絡んで強硬な発言が目立った。

 それが、最近は靖国参拝について明言を避け、尖閣への公務員常駐も「中国と交渉していくうえでの選択肢」とするなど姿勢を軟化させている。この点に注目したい。

 6年前の首相就任の直後、安倍氏中韓両国を訪問し、小泉政権下で冷え切っていた両国との関係改善に努めた。意欲を示していた靖国参拝も在任中は見送った。

 今回も、そうした現実的な対応を望む。

 もちろん、竹島尖閣も日本の領土である。

 だが、いたずらに対立を深めるような選択は事態をこじらせるだけだ。粘り強い外交努力を積み重ねてこそ国際社会に理解が広がり、日本の立場を強めることにつながる。

 安倍氏はかねて、河野談話村山談話の見直しを主張している。しかし、そんなことをすれば中韓のみならず、欧米からの視線も厳しくなるだろう。改めて再考を求めたい。

 前回の安倍政権当時と比べ、東アジア情勢は複雑さを増した。日中韓が友好を保つことの意味も重くなった。

 3国の指導者が交代するいまこそ、もつれた糸を解きほぐす転機とすべきである。