原発と活断層―科学者の仕事つらぬけ

 青森県にある東北電力東通(ひがしどおり)原発の敷地内にある断層について原子力規制委員会は「活断層の可能性が高い」と判断した。

 全員一致の見方だという。

 同じ地層を見ながら、なぜ原発建設前やその後の調査で確認できなかったのだろうか。

 これまでの国の審査がいかにずさんで、検査が電力会社まかせだったか、改めて考えさせられる。

 活断層の調査は、関西電力大飯原発福井県)、日本原子力発電敦賀原発(同)に続く3例目だ。電力会社にはいずれも厳しい評価が続いている。なかには「委員や専門家が反原発派で占められている」との恨み節さえ聞こえる。

 だが、評価にあたった専門家たちは、日本活断層学会などが推薦する候補のなかから、電力会社との利害関係を調べたうえで選ばれた中立な人たちだ。

 現地での調査や評価会合もすべて公開し、透明な手続きを経ての判断である。政府も民間も重く受けとめるべきだ。

 電力会社や原発立地県の知事は「科学的根拠はどこにあるのか」と反発している。経営難に陥りかねないことや、地域の経済への心配が背景にある。

 それはそれで考えるべき重要な課題だが、安全への判断をまげる理由にはならない。

 経済的利害をおもんぱかって科学側が遠慮すれば、規制行政への信頼は崩壊する。3・11の大震災と原発事故を経験した私たちが、これから決して見失ってはいけない反省だ。

 今後、電力会社や地元からの反論が出れば、規制委は公開の場で立証を求めればよい。

 どちらの見方がより合理的なのか、科学的な議論を尽くすことが基本だ。

 問題は、規制委人事が政争や総選挙のあおりで、今なお国会の同意を得ていないことだ。

 自民党の一部には、規制委の人選を「正式承認を得ていない民主党人事」とみなして、政権交代を機にやり直すべきだとの声があるという。

 しかし、政党の思惑で委員を入れ替えていいはずもない。

 独立性の高い国家行政組織法3条に基づく委員会にするよう求めたのは自民党だ。不当な政治介入は許されない。

 規制委は、重大な事故がおきた場合の放射性物質の拡散予測で訂正をくり返した。そんな未熟さもある。とはいえ、交代を考えるほどではない。

 与野党が協力して、次の国会で規制委人事への同意手続きを速やかに済ませるべきだ。安全判断の仕事は山積している。