一票の格差―「解消済み」は考え違い

 国会議員が真剣にとり組まねばならない課題がある。

 一票の格差の解消だ。

 「それは前の国会で処理済みだ」。そう考える議員がいたら認識が甘いというほかない。

 たしかに「衆院小選挙区議員定数の0増5減」と「参院選挙区の4増4減」が、衆院解散の前にかけ込み成立した。

 しかし小手先の修正にすぎない。引き続き「制度の抜本的な見直し」を検討するというものの、具体像はみえない。衆院中選挙区制に戻す、比例代表の定数を減らす、それに伴い比例議席の配分方式を改める――など思惑含みの案が飛びかう。

 利害関係がある国会議員が、自らの選出方法を公正、中立に決めるのはむずかしい。

 学識者でつくる選挙制度審議会を首相の下に設け、両院の役割やそれに応じた選び方について英知を集める。現時点で考えうる最善のやり方だろう。

 成案を得るまで一定の時間がかかってもやむを得ない。

 それまでの間、いまの状態で手をこまぬいていていいのか。

 まず衆院である。

 私たちは社説で0増5減の早期成立を唱えた。解散にむけた緊急避難策と考えたからだ。

 だが、格差の元凶である都道府県に一律1議席を割りふる1人別枠をやめ、小選挙区の全議席を人口に比例して配分し直せば21増21減になるはずだった。

 影響をうける選挙区を減らそうと、議員がお手盛りでまとめたのが0増5減だ。それも区割り作業が間に合わず、総選挙はもとの定数で実施された。

 「抜本的な見直し」が成るまで次の選挙が行われない保証はない。審議会の議論は議論として、本来やるべきだった是正をやりきる。それが筋だ。今回のような「時間切れ・その場しのぎ」の再現は許されない。

 参院にも大きな問題がある。

 4増4減の後でも、格差はなお5倍近くある。法の下の平等にほど遠いこの状態で、来年の参院選にのぞむというのか。

 都道府県の枠をこえたブロック制の導入などが間に合わないなら、今回だけの措置として、総定数を増やして都市部にまわし、格差を縮める方法も考えられる。経費は政党交付金や歳費を削ってあてればいい。

 違憲判決から逃れるぎりぎりの線を模索するだけで、肝心な有権者の権利を守る姿勢を見せない。そんな政治とは決別しなければならない。

 正統性を欠く制度で選ばれた議員が国の針路を語っても説得力はない。一票の格差の解消は政治を進める大前提である。