自公連立協議 現実的な原発政策を掲げよ

 連立政権を組む以上、閣内不一致に陥らないように、重要政策について極力すり合わせておくのは、当然である。

 自民党の安倍総裁と公明党の山口代表が会談し、第2次安倍内閣の発足に向けた政策協議を開始した。当面の経済対策として、大型の今年度補正予算を編成する方針で一致した。

 詳細は、自民・甘利、公明・石井の両党政調会長が協議し、週内の合意を目指すという。

 デフレ脱却は急務である。新政権が、政治を前に動かす「象徴」として、景気の立て直しを最優先する判断は間違っていない。

 補正予算の規模について、公明党は10兆円規模を主張するが、自民党は規模を明示していない。

 財源の一部を国債の追加発行に頼らざるを得ないこともあり、バラマキを避け、経済効果の高い歳出項目を選ぶことが大切だ。

 政策協議ではエネルギー政策の調整が焦点となる。自民党が「10年以内に最適な電源構成を確立する」方針を掲げるのに対し、公明党は「可能な限り速やかに原発ゼロを目指す」と唱えている。

 ただ、公明党も、経済・雇用への影響や技術者の確保に配慮する必要性は認めている。

 今も原発の代替電源である火力発電の燃料輸入が急増し、年3兆円の国富が海外に流出している。「原発ゼロ」では、産業の空洞化が加速し、公明党が重視する経済対策にも逆行するだろう。

 安全性が確認された原発は再稼働し、中長期的にも「原発ゼロ」は避けるという現実的な政策を自公両党はまとめてもらいたい。

 自公両党間では、憲法改正問題で主張の隔たりがあるが、今回の政策協議では「優先度が高くない」として深入りしない方向だ。新政権発足まで時間が限られている以上、やむを得ない判断だろう。

 自民党は、集団的自衛権を行使できるように政府の憲法解釈の変更を主張している。日米同盟を深化するうえで、重要な意義を持つ。本来は、ぜひ実現したい。

 公明党は反対の立場を崩していないが、実際に日本が集団的自衛権の行使を求められるのは、公海上で米軍艦船が他国に攻撃される場合や、日本上空を通過する弾道ミサイルで米国が攻撃される場合など、限定されている。

 どのケースで行使を可能にし、どんな歯止めをかけるのか。現実に即して議論を深めれば、両党の接点を見つけることは不可能ではあるまい。新政権の発足後も、与党内で論議を続けてほしい。