猪瀬都政始動 東京の難題をどう解決する

 東京都知事選で圧勝した猪瀬直樹氏が知事に就任した。山積する課題に取り組み、着実に成果を上げてもらいたい。

 都民は副知事として石原慎太郎前知事を支え、都政継続を唱えた猪瀬氏を信任した。

 434万という得票は日本の選挙で個人が集めた最多記録だ。衆院選とのダブル選となって投票率が高まり、有力な対抗馬が不在だったことが要因だろう。

 猪瀬氏に求められるのは、この大量得票におごらず、地道に職務を遂行していく姿勢である。

 猪瀬氏はまず、石原都政の政策を検証し、負の遺産を整理することに取り組むべきだ。

 その一つが、中小企業支援を名目に2005年に開業した新銀行東京の問題である。石原氏の肝いりで当初1000億円の都税を投入したが、経営危機に陥った。失敗だったとの批判が絶えない。

 返済を猶予する中小企業金融円滑化法が来年3月に期限切れとなれば、融資先の資金繰りが悪化しかねず、新銀行東京の経営が窮地に立たされる懸念がある。

 猪瀬氏は「単年度では黒字化を果たした」と主張しているが、経営再建の見通しはあるのか。事業継続の意義について、都民への明確な説明が必要だ。

 猪瀬氏は選挙戦で、電力エネルギー改革を進めていくと強調し、老朽化した火力発電所の施設更新の必要性などを訴えた。

 だが、火力発電頼みでは、燃料費の負担増で東京電力の経営が立ち行かなくなる恐れがある。電力の安定供給確保には、原子力発電所の再稼働が欠かせない。

 猪瀬氏が原発の再稼働について明確な姿勢を示していないのは、電力の大消費地の首長として問題だ。東電柏崎刈羽原発の再稼働を容認するよう新潟県などに働きかけていくべきである。

 防災対策も重要な課題だ。首都直下型地震は30年以内に70%の確率で起こると予測される。火災を起こしやすい木造家屋の不燃化、耐震化を急がねばならない。住宅密集地域の街並み改造を進めることも欠かせない。

 2020年の五輪開催都市は来年9月に決定される。東京への招致運動はこれからが正念場だ。開催への機運を盛り上げたい。

 900人もの区議がいる23区の議会についても、肥大化が指摘されたままで改革が手つかずだ。

 猪瀬氏は、「東京には日本を改革する役割がある。やれることは全部やる」と都職員に訓示した。その実行力が問われよう。