維新の会―政策の基本軸を明確に

 既成政党ではなく、新しい勢力が閉塞(へいそく)状況に風穴を開けてほしい。そんな期待の受け皿にもなったのだろう。日本維新の会が54議席を獲得し、民主と並ぶ勢力に浮上した。

 国政の一端を担うことになった以上、その責任は重い。維新が抱える課題を見つめ直したうえで、先に進むべきだろう。

 党内には旧太陽系と維新系の間で不一致が目立つ。代表代行の橋下徹大阪市長は、首相指名投票で「自公政権に乗る」と述べたが、代表の石原慎太郎氏は直後に「論外だ」と否定した。結局、石原代表を推すことになったが、早くも「双頭体制」の弊があらわになった。

 強い個性の2人のどちらが実質的に党を引っ張るのか。市長兼務の橋下氏は「二足のわらじ」で指揮できるのか。まずは司令塔の発言を、責任あるものにしなければならない。

 何をめざす政党なのか、軸足を定めることも急務だろう。

 国と地方の役割を見直し、道州制をめざす。既得権益と戦い、脱原発依存を進める――。こうした結党時の基本軸は太陽との合流で弱まった。今は石原代表が核武装シミュレーションに言及するなど、国家主義的なタカ派の印象さえ強い。

 選挙前、脱原発や環太平洋経済連携協定(TPP)で姿勢がぶれるなど、主張にあいまいさを残しているのも事実だ。大阪では強かったが全国的には票が伸びなかったのも、選挙戦略を優先させて、政策固めを棚上げしたことに、有権者が冷めた目を向けた結果ではないか。党の目標を整理し直すべきだ。

 その際、地域政党の原点に立ち返ってはどうか。

 二重行政のむだをなくし、権限と財源の配分法や地方の役割を根本から考え直す。こうした大阪都構想のねらいを成果として見せてこそ、「大阪の改革を全国へ広げる」という当初からのスローガンが説得力をもつ。

 大阪では都構想に向けた2015年春の新制度移行へ、区割り案の検討が始まったばかりだ。改正が必要な関連法案も多い。国政進出を生かし、改革の歩みを速める戦略がいる。

 「中央集権の打破」に加え、「公共工事拡大路線とは異なる経済成長」も選挙戦で訴えた。安倍政権に対し、維新は与党でも野党でもなく、是々非々でのぞむというが、有権者に約束した以上、行動で示すべきだ。

 維新は来年の参院選でも全国で候補者を擁立する方針だ。これからの評価は、選挙向けの目立つ言説ではなく、文字通り、実績次第である。