GDPマイナス 景気の失速回避に全力あげよ

 景気後退のサインとみるべきだ。日本経済の失速を回避できるかどうかの正念場である。

 今年7〜9月期の実質国内総生産(GDP)は前期比0・9%減と、3四半期ぶりのマイナス成長となった。年率に換算すると3・5%減で、野田首相は「厳しい数字だ」と危機感を示した。

 海外経済の減速に伴う外需の落ち込みに加え、個人消費と設備投資という内需の二本柱がそろって減少したことが主因だ。復興需要による公共投資の増加では、マイナスを補いきれなかった。

 消費は、エコカー補助金の終了で自動車販売が苦戦し、薄型テレビなど家電の不振も続いている。企業業績の不透明感が強まり、設備投資が控えられた。

 政府・日銀は、復興需要で内需を支えながら海外経済の回復を待ち、本格的な成長につなげるシナリオを描いていたが、早すぎた内需減速で目算は外れつつある。警戒を強め、景気の下支えに万全を期さねばならない。

 懸念されるのは、海外経済の早期回復が望み薄なことだ。

 欧州はマイナス成長に陥っている。米国も年末から来年にかけて減税打ち切りなど「財政の崖」が控えており、世界経済に打撃を与える恐れがある。

 中国経済の減速と尖閣諸島問題を巡る日中関係の悪化を受け、中国向け輸出が急減していることも大きな不安材料といえよう。

 こうした逆風に対して、予備費を使った小粒の緊急経済対策では力不足が否めない。政府は補正予算を早期に編成し、本格的な景気対策を打ち出すべきだ。

 ただし財政事情は厳しい。効果の高い公共事業などに、予算を重点配分する必要がある。

 経済成長は、民間の創意で「売れる商品」を開発し、普及させていくことが最大の推進力となる。特に、環境関連や医療などの成長分野は今後、ビジネスチャンスの拡大が期待される。

 投資減税による研究開発への支援や、新事業の障害となる規制の緩和などで後押ししたい。民間の要望に耳を傾け、的確な施策を厳選することが重要となる。

 民間活力を最大限に引き出すためには、国内の事業環境を改善させることも急務だろう。

 具体的には、歴史的な超円高の是正や国際的に高い法人税率の引き下げ、原子力発電所の再稼働による電力不足の解消などだ。政治の安定を図り、日本の成長をテコ入れしなければならない。