「年内解散」検討 環境整備へ与野党は歩み寄れ

 年内の衆院解散へ、与野党は懸案処理を急ぎ、野田首相が決断できる環境を整えるべきだ。

 首相が解散・総選挙の検討に入った。民主党内に離党予備軍を抱え、衆院での与党過半数割れも視野に入る。首相は、追い込まれるよりも主導権を握った形での解散を模索しているのだろう。

 前回衆院選から約3年2か月が経過し、国民に信を問う潮時を迎えつつあるのは確かだ。

 首相の背中を押したのは、自民党の安倍総裁が解散の確約にこだわらず、赤字国債発行を可能にする特例公債法案の成立などに協力する方針に転じたことだ。

 法案は15日に衆院を通過し、月内に成立する見通しだ。

 自民党が、国民生活を「人質」とする戦術は取るべきではないと判断したのは妥当である。

 衆参ねじれ国会の下、首相が重要法案成立と引き換えに解散時期の明示を迫られることは、解散権の制約につながろう。

 こうした駆け引きが繰り返されれば、政権は短命化し、政治の混迷が続く。安倍氏の譲歩は、政権復帰を目指す自民党にとっても損にならないはずだ。

 公明党も、解散の確約にこだわらず、自民党に同調した。部分的にせよ、民自公路線がこの局面で復活した意義は大きい。

 3党は、来週の党首討論衆院予算委員会の開催でも合意した。尖閣諸島問題や、首相が参加に前向きな環太平洋経済連携協定(TPP)を巡り、活発な政策論議を繰り広げてもらいたい。

 解散へのもう一つの条件である衆院選挙制度改革に関し、民主党は、小選挙区の「0増5減」と比例定数削減の同時決着を求める姿勢を崩していない。だが、これでは野党の協力が得られず、法案成立のメドは立たない。

 「違憲状態」のままの衆院選を避けるには、自民党の求める「0増5減」の先行処理が不可欠だ。民主党の輿石執行部は腹をくくって、方針を転換する時である。

 一方、参院の野党は、首相問責決議を理由に、政権と全面的に対決する構えを示している。

 民自公3党は、年金支給額を物価下落に応じ、適正水準に是正する国民年金法改正案の衆院通過でも大筋合意した。参院でも、3党が協力し、必要な法案については成立させるべきである。

 参院民主党は、野党の反対で見送った参院本会議での首相の所信表明演説を求めている。要らざる挑発は控えた方がいいだろう。