赤字国債合意 ねじれ国会の暫定休戦協定だ

 ようやく与野党攻防の出口が見えてきた。

 民主、自民、公明の3党は今回の合意を踏まえて、衆院解散への環境を整えねばならない。

 民自公3党が、赤字国債の発行を可能にする特例公債法案の修正で正式に合意した。2015年度まで、予算案が成立すれば、自動的に赤字国債発行を認める仕組みを導入する。

 衆参ねじれ国会の下、参院で多数を占める野党は法案を人質に政府を揺さぶってきたが、今回の合意で不毛な政争は避けられる。そのために、与野党が、新たなルールを作ったことは評価できる。

 昨年は、法案の成立が菅首相退陣の取引材料になった。

 今年は野田首相に解散を迫る“武器”となり、成立がずれこんだ結果、政府の予算執行の抑制で地方交付税の配分が滞った。地方自治体が「国民生活に影響しかねない」と反発したのは当然だ。

 野田首相が言うように、今の財政状況では、どんな政権でも、赤字国債を発行せずに歳出に見合う財源を確保できない。

 自公両党は、仮に衆院選後、政権に復帰しても、参院過半数議席を持っていない。法案を政争の具にしないという合意は自公両党にとっても損ではなかろう。

 今回の合意には懸念も残る。

 赤字国債の発行は、財源不足を特例措置として補うもので、本来は“禁じ手”である。

 予算案とは別に特例公債法案を成立させねばならないとしてきたのは、財政規律を維持し、野放図に借金が膨らまないよう歯止めをかける狙いがあった。

 三木内閣当時、大平正芳蔵相は国会で毎年の法案審議について「緊張した財政運営に資する」と述べ、その意義を強調している。それでも、赤字国債は増え続け、深刻な財政悪化を招いた。

 今後、自動的に発行できるとなれば、財政規律が緩まないか。

 民自公3党の合意は「特例公債発行額の抑制に取り組むこと」を前提にしている。政権交代があっても、政府はこれを肝に銘じて予算編成に当たらねばならない。

 解散に向けて残る課題は衆院選挙制度改革である。民主党は「1票の格差」是正と定数削減を同時に行う法案を提出する方向だ。

 だが、何より「違憲状態」を解消することが求められている。

 首相も国会で「憲法と関係のある1票の格差が最優先だ」と答弁した。民自公3党は、小選挙区の「0増5減」先行処理でも、合意を急ぐべきである。