「主人公の気持ちと自分の気持ちがリンクする」 長澤まさみさん
公開中のスタジオジブリ映画「コクリコ坂から」で主人公の声優を務めた長澤まさみさん。小説・マンガが原作の映画やドラマに多く出演されている長澤さんに、過去に出演した作品や読書についてお聞きしました。
勢いでやってしまった「セカチュー」
原作を読まずに臨んだ「コクリコ坂から」
――長澤さんは原作のあるドラマや映画に出演されることが多いですね。役作りのためにも原作も読み込んでから臨まれるとのことですが、印象に残っている作品は?
『岳』では登山にも挑戦しましたが、小説が原作になっていたものでは、『世界の中心で、愛をさけぶ』や、たかのてるこさんの紀行エッセー『ガンジス河でバタフライ』が印象に残っています。
今考えてみると、『世界の中心で、愛をさけぶ』は、今やれと言われてもできない気がします。(剃髪も)勢いでやってしまった部分もあったのかなって。当時はそんなことは思っていなかったのですが、16歳で怖いものもなかったんです(笑)。
――このたび公開になった「コクリコ坂から」もマンガ原作の作品です。
この作品に関しては、「読まないでください」ということを言われていました。先入観を持たないでほしいということだったのかもしれません。
――長澤さんが演じた主人公「松崎海」は落ち着いた感じの声でした。
今回は、「無愛想に、無愛想に」ということを意識して喋っていました。
初めは、すごく張り切って、大きな声でアニメっぽい声を出していたんです。そしたら「声を張らないで」「声優さんではなくて俳優さんを使う意味を考えて」と言われて。声のトーンを決めるのに半日かかったのですが、「無愛想な感じの喋り方がいい」ということになって、「じゃあ海は、凛とした、ちょっとぶっきらぼうなくらい無愛想なキャラで」ということになりました。キャラクター性が声から決まっていくのは初めての経験でした。
面白いもの、笑えるものが好き
――読書が趣味ということですが、普段はどういう本を読みますか?
子どもの頃からマンガは好きで読んでいます。小説は最近なかなか読めなくなってしまったのですが、去年は北大路公子さんのエッセーにはまりました。面白いもの、笑えるものが好きですね。『行け! 稲中卓球部』とかも読みます。高校生くらいの頃友人からすすめられて。読んでみたら面白くて、その後(『稲中』の作家・古谷実の)『シガテラ』も読みました。最後にものすごい急展開というか大どんでん返しもあるし、個人的には『シガテラ』のほうが好きですね。マンガは制限なくどっぷりとその世界に浸れるので好きです。
あと、さくらももこさんの作品は方言が多くて、舞台が同郷の静岡で親近感が沸くので好きですね。『ちびまる子ちゃん』を見ている人からは、子どもがおばちゃんのようなしゃべり方をするなんて嘘っぽいとよく言われるのですが、静岡の方言は本当にあんな感じなんです。
――本を読むのはどういうときに?
ヒマなときに、家で読むことが多いです。あと、人にすすめられたら必ず読むようにしています。友人のお母さんから紹介されたものでも読んでいましたね(笑)。本屋さんも好きで、割と「ジャケ買い」をすることが多いです。高校生の頃から周りに読書家が多くて、江國香織さんの作品が流行っていたので、みんなで読んでいました。
サスペンスも好きでした。ハラハラドキドキ系のもので、山田悠介さんの『リアル鬼ごっこ』に中学生のときにはまっていました。ジェットコースターに乗っているような感じで。丑三つ時に「怖い!」って思いながら読んだりして遊んでいましたね。
――電子書籍もかなり出てきています。長澤さんが出演する「モテキ」(9月23日より公開)の原作コミックも電子書籍で読めます。
iPhoneは持っているんですが、電子書籍はまだ読んでいません。紙の本をめくるのが好きなんです。近眼で、かなり顔を近づけて読まないといけないので、紙のほうがいいんですよね。本は持っているだけでカッコイイというのも好きなんです。
初めは意味が分からなかった「本谷ワールド」
――最近はどんな本を読んでいますか?
本谷有希子さん作・脚本の舞台「クレイジーハニー」が8月から始まるので、本谷さんの勉強という意味も兼ねて小説を全て読みました。『生きてるだけで、愛。』はとても面白くて、あっという間に読み終えてしまいました。
本谷さんは劇作家でもあり小説家でもあるので、台本がすごく面白くて。でも、初めは本当に意味が分からなかったんです(笑)。あまりにも過激で主人公の気持ちが激しすぎて、絶対この人には感情移入できないなと思っていました。読み重ねていくうちに深みが出てきて、大きな出来事があるわけではないんだけど、感情の乱れみたいなものがでてきて、心情を読み取れるようになるのは面白いなと思うようになって。小説を読んでいて面白いと思うのは、主人公の気持ちと自分の気持ちがリンクする瞬間。そういうのがあるので、小説っていいなと思いますよね。