憲法改正論議 公明党は現実路線で一歩前に
参院選を控え、与野党は、公約の策定などの準備を加速させている。
憲法改正問題を通じ、国家の基本に対する政党の姿勢が問われよう。
公明党は、参院選の公約として憲法改正に関しては、環境権など新たに必要な条文を憲法に加える「加憲」が、「最も現実的で妥当な方式」だと主張する方針だ。
9条にも言及し、現在の条項を残したまま自衛隊の存在や国際貢献の在り方を加えることを「慎重に検討する」と明記する。
憲法に自衛隊の規定がないことが「自衛隊は軍隊ではない」との現実離れした解釈を生み、安全保障政策の深まりを妨げてきた。
「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」という9条2項をそのままにして、自衛隊をどう位置付けるのか。疑問は残るものの、公明党が9条改正に向き合った点は評価できる。
加憲の条文化へとさらに踏み込んでもらいたい。
公明党は、改正手続きを定めた96条について、他の改正内容とともに議論するのがふさわしいとして先行改正に慎重論を唱えた。この点は、自公両党が共通公約を作成できなかった要因でもある。
だが、衆参各院の総議員の「3分の2以上」という発議要件では国会が憲法改正を国民に提案することは難しい。諸外国と比べてもハードルが高すぎる。要件緩和へ議論を重ねる必要がある。
参院選次第で、憲法改正論議における公明党の比重が高まろう。憲法改正草案を掲げる自民党との調整を進めなければならない。
一方、民主党の立場は依然、明確ではない。公約原案には「国民とともに『憲法対話』を進め、補うべき点、改めるべき点への議論を深め、未来志向の憲法を構想する」とある。これでは、何も主張していないに等しい。
どの条項をどう見直すのか、具体的に示さなければ有権者も判断しようがない。「補うべき点」や「改めるべき点」は、自衛隊の存在、環境権、緊急事態条項、強すぎる参院の権能など、長年の議論で既に明らかではないか。
民主党は、自らの対案は示さずに、自民党案には「時代錯誤」「復古調」とかみついている。
昨年の衆院選でも、民主党は「自衛隊を大陸間弾道弾を飛ばすような組織にするのか」などと、極端な議論で自民党への不安をあおる選挙戦術が目立った。
民主党は、“レッテル貼り”に走るのではなく、建設的な論戦を展開すべきである。