対「北」防衛協議 日韓関係改善の一歩にしたい

 北朝鮮の軍事的挑発に効果的に対処するには、日米韓3か国の結束が欠かせない。情報を広く共有し、安全保障政策を緊密に調整して、部隊の抑止力を高めたい。

 小野寺防衛相、ヘーゲル米国防長官、韓国の金寛鎮国防相シンガポールで会談した。

 国連決議に基づく核兵器・開発計画放棄の義務の履行を北朝鮮に強く求めるとともに、北朝鮮の挑発を抑止するため日米韓が協力するとの共同声明を発表した。

 北朝鮮は4月に弾道ミサイル発射の構えを見せたが、見送った。5月下旬に金正恩第1書記の特使を中国に派遣し、関係国との対話に前向きな姿勢に転じている。

 対北朝鮮外交で成果を上げるには、日米韓が足並みをそろえ、中国やロシアを巻き込んだ北朝鮮包囲網を構築して、実効性ある圧力をかけることが必要である。

 北朝鮮の恫喝外交に動じないよう、日米韓が部隊の共同訓練を重ね、警戒監視活動を強化しておくことも大切である。

 日米韓の防衛協力は、対北朝鮮以外にも、災害救援・人道支援や海賊対策、東南アジアに対する軍事・海上保安能力構築支援など、様々な分野に広がっている。

 日米韓に加え、日米豪、日米印など3か国の協力の枠組みをそれぞれ重層的に拡充することが、アジア全体の安定に役立とう。

 一方、日米韓3か国の中で、日米・米韓に比べて、日韓の連携が不十分なのは懸念材料だ。

 李明博前大統領の竹島訪問で悪化した日韓関係は、今年2月の朴槿恵政権発足を機に、改善に向かうことが期待されていた。

 だが、麻生副総理らの靖国神社参拝や日本維新の会の橋下共同代表の従軍慰安婦発言、日本への原爆投下を「神の懲罰」と評した韓国大手紙コラムなどで、むしろ関係が悪化しているのは残念だ。

 朴政権下では首脳・外相会談が1回も開かれていない。今回も日韓会談は見送られたが、3か国会談をテコに日韓関係を再構築したい。国際会議などの機会も活用し、首脳・閣僚会談を開けるよう、両国は外交努力を重ねるべきだ。

 北朝鮮だけでなく、台頭する中国ときちんと向き合うためにも、日韓の連携強化は戦略的課題であり、米国も強く望んでいる。

 日韓間では、北朝鮮軍の動向など軍事情報の交換は続いている。より本格的な安保協力には、軍事情報包括保護協定(GSOMIA)や物品役務相互提供協定(ACSA)の締結が急務である。