運動部活動 暴力に頼る指導は許されない

 暴力に頼らず、生徒の能力を伸ばす指導を学校の運動部活動で徹底することが必要だ。

 文部科学省有識者会議が、運動部活動の指導指針をまとめた。大阪市立桜宮高校バスケットボール部の体罰自殺問題以降、特に部活動の体罰事例が相次いで発覚したためだ。

 部活動の指導者には、いまだに暴力などの体罰を厳しい指導とはき違える傾向がある。指針を指導者の意識改革の契機としたい。

 運動部活動は、学校教育の一環である。中学校で6割、高校で4割の生徒が参加している。仲間と汗を流すことを通じて、努力する大切さを学び、協調性や責任感を身に着ける貴重な時間だ。

 しかし、指導法を間違えれば、生徒の心身を傷つける結果となる。暴力について、指針が「生徒との信頼関係があれば許されるという認識は誤りだ」と、明確に否定したのは当然である。

 指針はさらに、勝利を目指すこと自体は問題ないとしつつ、勝利至上主義に陥って、行き過ぎた練習を強要しないよう求めた。

 具体例として、技術を習得させる反復練習は許されるが、炎天下で水も飲ませずに長時間ランニングをさせることなどは認められないとした。威嚇的で人格を否定するような暴言も禁じた。

 東京都教育委員会が先週まとめた体罰調査の報告書を見ると、指針の必要性を実感させられる。

 ある都立高野球部の顧問教師は、試合に負けた罰として、生徒に昼食抜きで40キロも走らせた。「敗因を考えさせるためだった」と理由を語ったという。あまりに独りよがりな考え方だ。

 限度を超える運動を課せば、熱中症や心肺停止など重篤な事故につながりかねない。

 部活動では、教師以外の外部の競技経験者が指導にあたることもある。研修を通じて、外部指導者にも部活動の教育的意義や体罰禁止を徹底させるべきだ。

 学校の部活動で活躍した選手の中には、スポーツ界で指導者の道を歩むケースも少なくない。

 体罰を受けた経験があると、自らが指導する立場になった際、同じように暴力を振るう。その連鎖が、部活動にとどまらず、スポーツ界全体に暴力的な指導がはびこっている要因だろう。

 日本体育協会などのスポーツ団体は4月、遅ればせながら「暴力行為根絶宣言」を行った。スポーツ界と教育界は協力して、指導者の資質向上と適切な指導法の普及に取り組んでもらいたい。