参院山口補選 安倍政権の勢い映した前哨戦

 発足から4か月を経た安倍政権の勢いを、そのまま反映したかのような結果である。

 第2次安倍内閣の発足後、初の国政選挙となった参院山口選挙区補欠選挙は、自民党公認の新人、江島潔氏が民主党などの推薦で元法相の新人、平岡秀夫氏らを大差で破った。

 山口県は、安倍首相の地元で、衆院全選挙区を自民党が独占する「保守王国」だ。江島氏は公明党の推薦も取り付けて、選挙戦を終始優位に展開した。

 首相もお国入りし、「今進んでいる道以外にデフレからの脱却はできない。長州から日本を取り戻そう」と、県民の景気回復への期待感に訴えた。

 北朝鮮の核・ミサイルの脅威が高まり、中国が領海侵入などを繰り返す中、安倍政権の日米同盟の立て直しを急ぐ姿勢も、江島氏への追い風になったといえよう。

 一方、平岡氏は「自民党に対抗する政治勢力の結集」を掲げ、安倍政権の経済政策「アベノミクス」や、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉への参加、憲法改正の方針をことごとく批判した。だが、支持は広がらずに終わった。

 民主党を中心に「無所属・党推薦」候補を擁立し、野党各党が結束して自民党と戦う、という構図も作り切れなかった。

 平岡氏は、民主党の菅元首相らの支援を受け、山口県内で中国電力が進める上関原発の建設計画を争点に据えようと、「脱原発」を主張した。社民党みどりの風との共闘を図ったものの、主要な争点にならなかったといえる。

 代替エネルギー確保の見通しもなく、原発を否定するだけでは説得力を持たなかったのだろう。

 民主党の海江田代表は、山口補選を都議選や参院選への前哨戦と位置づけ、「山口の地から『安倍政治ノー』という声をあげたい」と訴えたが、浸透しなかった。

 民主党は、参院選戦略の練り直しが迫られよう。

 今回の補選の結果、参院自民党会派は1議席増える。民主党で離党者が相次いでいることもあって、参院では近く、最大会派の民主党自民党議席がそれぞれ84で並ぶ見通しだ。

 国会運営でも、民主党の発言力低下は避けられない。

 参院選に向け、もはや民主党の看板では戦えないと考える議員がさらに出てくる可能性もある。

 民主党衆院選惨敗から立ち直るどころか、むしろ混迷を深めるばかりだ。なぜ支持を回復できないのか、現状を直視すべきだ。