中国の尖閣発言 「核心的利益」とはお門違いだ

 沖縄県尖閣諸島周辺の緊張を高める危険な言動を、中国の習近平政権は厳に慎むべきだ。

 中国外務省報道官が記者会見で、尖閣諸島について「中国の領土主権に関わる問題で、当然、中国の核心的利益だ」と述べた。尖閣諸島が「核心的利益」の対象だと当局者が明言したのは初めてである。

 核心的利益とは、国家主権や領土保全など、中国にとって絶対に譲歩できない国益を指す言葉だ。これまで主として台湾やチベットウイグルに用いてきたが、近年は南シナ海にも使っている。

 尖閣諸島については、昨年1月、共産党機関紙「人民日報」が使ったが、政府が公式に認めたことはなかった。今回の報道官発言は、「海洋強国化」を図る習政権が尖閣諸島を国家の最優先課題に位置づけたことの証左だろう。

 核心的利益の対象を一方的に広げて、領土や海洋権益の拡大に固執する中国の姿勢は、独善的な膨張主義にほかならない。

 断じて容認できない。日本政府は国際社会に対し、中国の不当性を粘り強く訴えねばならない。

 今後、中国が国家海洋局の監視船を大挙、尖閣諸島周辺の領海に侵入させることもあるだろう。日本はあらゆる事態を想定して、対応策を練る必要がある。

 政府は、南西諸島周辺での防衛態勢を強化し、警戒監視活動に万全を期すことを明記した海洋基本計画を閣議決定した。海上保安庁自衛隊との連携などを強化していくことが肝要である。

 看過できないのは、中国軍の関与が着々と強まっていることだ。1月には尖閣諸島の北方海域で、海軍艦艇による海上自衛隊艦艇へのレーダー照射事件も起きた。

 この海域では、今も中国海軍艦艇と海自艦艇がにらみ合う緊迫した状況が続いている。

 中国には、強大な軍事力を背景に武力行使も辞さない方針をちらつかせ、日本を揺さぶったり、実効支配を切り崩したりする狙いがあるのだろう。

 中国は言葉では「決して覇権を唱えない」と強調するが、その行動は周辺国への脅威を高めるばかりだ。安倍首相も「この2年で日本と中国の軍事バランスが完全に壊れる」と懸念を示している。

 軍事力を前面に出す中国の強硬姿勢は不測の衝突を招きかねず、危険極まりない。

 日中の防衛当局は、艦艇や航空機の偶発的事故を防止する「海上連絡メカニズム」の協議を再開した。早期合意を目指すべきだ。