待機児童解消 「横浜方式」をどう生かすか

 「女性の活躍」を成長戦略の中核に位置づける安倍首相は、スピード感のある施策が必要と判断したのだろう。

 首相が、保育のニーズがピークを迎える2017年度までに「待機児童ゼロ」を目指す方針を明らかにした。従来の計画を2年前倒しして、40万人分の保育の受け皿を確保するという。

 「女性が働き続けられる社会」を実現するには、保育所に入りたくても入れない待機児童を減らすことが欠かせない。首相の方針に沿って、政府は対策に一層、力を注いでもらいたい。

 全国の待機児童数は約2万5000人に上る。保育所の増設が進められているが、それ以上に入所希望者が増え続けている。特に、大都市では、待機児童の急増が深刻な問題になっている。

 注目されるのは、林文子横浜市長の積極的な取り組みだ。10年度の待機児童は、全国最多の1552人に上ったが、2年後には179人に激減させた実績がある。首相も「横浜方式を全国に展開したい」との意向を表明した。

 横浜市はこの2年間に待機児童対策の予算を年10%ずつ増額した。認可保育所を71増設し、定員を約5000人増やした。保育所開設に意欲的な団体、企業と土地提供者の仲介も行っている。

 専門の相談員「保育コンシェルジュ」を置き、子供の預け先を探す父母を対象に、民間の小規模施設、幼稚園の預かり保育など、多様な保育サービスについてのアドバイスを行っている。

 他の自治体にとっても大いに参考になるだろう。

 独自の「横浜保育室」を約150か所に設置していることも特徴の一つだ。利用料は認可保育所とほぼ同額で、児童の貴重な受け皿となっている。

 横浜保育室は、厚生労働省令で定める認可保育所の基準を満たしていない。配置される保育士も認可保育所より少ない。

 認可保育所だけでは、保育の需要に応えきれない現状の中、横浜保育室のような無認可施設を、政府は待機児童対策の中でどう位置づけていくのか。今後の大きな課題と言えるだろう。

 昨年成立した子ども・子育て支援3法に従い、15年に消費税が10%に引き上げられる際、「子ども・子育て支援新制度」が発足する。これに消費税から7000億円を充てる予定だ。

 政府と自治体が連携し、この財源を待機児童対策に有効活用してもらいたい。