エネルギー計画 現実的な原発政策に練り直せ

 政府の電力政策の指針となるエネルギー基本計画を現実的な内容に改める必要がある。民主党政権で迷走した議論の仕切り直しに期待したい。

 経済産業省総合資源エネルギー調査会は今週、新たなメンバーで論議を再開する。年内をめどに計画の見直し案を取りまとめる方針という。

 今回の調査会は、脱原発派を外すなどして、委員を25人から15人に減らした。建設的に意見集約する環境作りのためだろう。原発の立地する福井県の西川一誠知事らを加え、当事者の声を反映させる狙いも妥当だ。

 安全の確保を前提に、原発をどのように活用するか。地に足の着いた議論が肝要である。

 現行のエネルギー基本計画は2010年に策定された。温室効果ガスの「25%削減」を視野に、原発を14基も増やす内容だ。

 翌11年の東京電力福島第一原発事故を受け、菅内閣が計画の見直しに着手した。約1年間に33回も開いた会議は、将来の原発比率を巡る委員の意見が大きく分かれたまま、議論が打ち切られた。

 野田内閣が唐突にまとめた「30年代に原発稼働ゼロ」の方針が基本計画に反映されなかったのは、政権交代の効用と言えよう。

 安倍内閣は安全性の確認できた原発を再稼働する方針だ。原発の中長期的な役割を、どう位置づけるかが問われる。

 原発の安全技術は、かつてより大きく進歩している。最新型への切り替えは安全向上に資するはずだ。原発の更新・新設を排除せずに議論することが欠かせない。

 核燃料サイクル政策や放射性廃棄物の最終処分についても、真剣に打開策を探ってもらいたい。

 大半の原発が稼働しておらず、当面は石炭や液化天然ガス(LNG)などの火力発電が頼りだ。

 LNGなど燃料輸入のコストが年3兆円も増え、巨額の貿易赤字で国富の流出が続いている。

 電力会社は安い燃料の調達に努めるべきだが、原発政策が不透明なため、価格交渉で資源国に足もとを見られている面もある。長期的な原発活用を、政府方針として明確に示す意義は大きい。

 太陽光や風力など再生可能エネルギーの拡大策も、エネルギー基本計画の大きな論点となろう。

 ただし、天候によって発電量が急変動するなど、短所も多い。乗り越えるべきハードルは高い。

 技術やコスト面での裏付けもなしに、期待先行で飛躍的な拡大を見積もることは避けるべきだ。