自公連立合意 TPP先送りなら国益損ねる

 国益を本当に重視するなら、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉に参加する決断を先送りしてはなるまい。

 自民党の安倍総裁と公明党の山口代表が会談し、景気・経済対策、外交安保など8項目の連立政権合意書に署名した。

 合意書は、「自由貿易をこれまで以上に推進する」としたうえ、TPPについて「国益にかなう最善の道を求める」と明記した。

 先の衆院選政権公約は、自民党が「聖域なき関税撤廃が前提なら反対」、公明党も「(国会で)十分審議できる環境をつくる」と、いずれも慎重だった。連立合意は、TPP交渉参加に含みを持たせたのであれば、前向きな動きだ。

 米豪など11か国は、来年中のTPP交渉の妥結を目指している。日本は参加に踏み切れず、カナダ、メキシコにも後れをとった。

 自由貿易を通じた経済成長にも日米同盟の強化にも、TPP参加は有力な手段となるはずだ。

 自民党内では、来年初めの首相訪米時の参加表明を求める積極論がある一方で、農業票の離反を恐れて来夏の参院選後に決断を先送りする慎重論も根強い。

 参院選前は「安全運転」に徹したい事情は理解できるが、交渉参加を遅らせる不作為は、日本の主張を貿易・投資ルールに盛り込む余地を狭め、結果的に国益を損ねることを忘れてはならない。

 通商協定では、国益に反すると判断すれば、交渉過程で離脱することも、最終的に国会で承認しない選択もあり得る。交渉前から、悪いシナリオばかりを想定するのは建設的ではない。まずは早期に交渉参加を表明すべきだ。

 連立合意は、消費税率引き上げ時の低所得者対策として、食料品などの軽減税率の導入を検討することを盛り込んだ。自民党公明党に歩み寄ったものだ。

 軽減税率は、民主党政権が主張する給付付き税額控除よりも簡明で、分かりやすい。新聞や書籍を対象とすれば、知的文化を守ることにつながる。対象品目の線引きなどの課題は、自公両党が十分協議し、克服してもらいたい。

 原発政策は、公明党が公約に掲げた「原発ゼロ」を採用せず、「原発依存度を減らす」との表現で当面の活用をうたった。安全が確認された原発の再稼働も容認し、現実的な内容と評価できる。

 安倍氏は、原発新設を認めない民主党政権の方針を見直す考えも示している。経済・雇用への悪影響を最小限に抑えることと、原発の安全確保との両立が大切だ。