格安航空会社 安全と信頼が飛躍につながる

 今年相次いで運航を開始した国内の格安航空会社(LCC)が、存在感を増しつつある。

 飛行機に乗ったことのない客層も掘り起こし、「LCC」は2012年の流行語大賞の一つに選ばれた。

 LCCの進展は、高コスト体質の航空業界に効率化を促し、旅行需要が旺盛なアジアの観光客を取り込み、経済活性化につながる。さらなる飛躍を期待したい。

 関西空港を拠点に3月から就航した全日本空輸系のピーチ・アビエーションは、利用客が100万人を突破した。夏には、成田空港が拠点の全日空系のエアアジア・ジャパン日本航空系のジェットスター・ジャパンが参入した。

 お盆シーズンの搭乗率は軒並み90%前後と、70%台の大手2社を上回った。年末年始の予約状況もほぼ満席という。

 運賃を大手の半分以下に抑え、学生や高齢者、女性などの顧客層を開拓したことが功を奏したのだろう。安全と手頃な価格を両立させれば、需要創出が可能なことを実証した意味は大きい。

 とはいえ、日本の旅客輸送量に占めるLCCの比率は3%程度に過ぎず、30%前後と高い欧米と比べると普及が遅れている。

 LCC各社には一層の経営努力が求められるが、国内線だけでは成長が限られる以上、海外への路線拡大が重要だ。ピーチとエアアジアが今秋、アジアに路線を延ばしたのは妥当な戦略と言える。

 運航の質を高めることも不可欠だ。引き続き安全運航を徹底するとともに、定時運航率の改善を急がなければならない。パイロット確保も重要な課題だろう。

 LCC人気を一時のブームに終わらせないよう、各社は信頼向上を図ることが求められる。

 国土交通省などの空港運営の見直しもLCC普及に大切だ。

 関西と那覇で低廉なLCC専用ターミナルが稼働したが、成田が14年度に新設する施設は巨額な事業費を投じ、必要以上に豪華との声が根強い。使用料や着陸料など海外より割高な空港コストの削減を検討すべきだ。

 成田の使用時間は、騒音対策で午前6時から午後11時に制限されている。少ない航空機を何度も往復させるLCCは、一度の遅れが玉突きで広がる。地方発で成田到着が「門限」に間に合わず、欠航する便が相次いだ。

 国交省は、時間制限を深夜と早朝各1時間ずつ緩和する案を提示した。自治体や住民と調整し、早期に実現してもらいたい。