女性大統領誕生 未来見据えた日韓関係構築を

 韓国初の女性大統領の誕生である。経済の再生や、日韓関係の再構築などで指導力を発揮して、新しい時代を切り開いてもらいたい。

 韓国大統領選で、与党セヌリ党朴槿恵氏が最大野党・民主統合党文在寅氏との接戦を制し、当選した。

 選挙戦の最大の争点は、格差是正や雇用など経済問題だった。

 財閥への規制強化に力点を置く文氏に対し、朴氏は、経済成長の維持と、若者などの雇用確保を重視した。有権者は、輸出を担う大企業の締め付けより、成長と雇用拡大を望んだと言える。

 韓国は、米欧などとの自由貿易協定(FTA)推進を軸に貿易額で世界トップ10入りしたが、それが雇用増にはつながっていない。雇用の受け皿となる中小企業の強化や育成が重要な課題だ。

 対北朝鮮政策でも、両候補の違いは目立った。

 文氏は、北朝鮮への食料、肥料などの大規模支援を、無条件で再開し、金正恩朝鮮労働党第1書記との首脳会談を来年中に行うと公約した。左派政権時代の太陽政策に回帰しようとするものだ。

 これに対し、保守派の朴氏は、南北対話再開に前向きな姿勢は見せたが、本格的な支援は信頼関係構築が前提、とした。北朝鮮に非核化への具体的な取り組みを求める現行路線を踏襲している。

 北朝鮮は、長距離弾道ミサイル発射を強行するなど、依然、核・ミサイル開発を進めている。北朝鮮に日米韓の連携強化で厳しく臨もうとする朴氏の当選は、日本にとっても歓迎できるものだ。

 朴氏は、1965年に国内の強い反対を押し切って日韓国交正常化を断行し、韓国を「漢江の奇跡」と呼ばれる高度経済成長路線に導いた朴正煕大統領の娘である。選挙戦では、経済連携協定(EPA)の推進など、日本との関係を重視していく立場を打ち出した。

 少子高齢化対策、北朝鮮や膨張する中国への対応など、日韓共通の課題は多い。

 自民党の安倍総裁は「緊密に意思疎通を行うことで、大局的な観点から日韓両国の関係をさらに深化させていきたい」と朴氏当選を祝うコメントを発表した。日本でも来週、安倍政権が発足する。

 日韓の両首脳にはまず、李明博大統領の竹島訪問と「天皇の謝罪」要求発言で最悪になった日韓関係の修復を図ってもらいたい。

 楽観は禁物だが、歴史問題がこれ以上、両国に否定的な影響を与えぬよう双方の努力が必要だ。