衆院解散 問われる各党の公約と実行力

 ◆「第3極」の真価を見極めたい◆

 民主党を中心とする政権の継続か、自民、公明両党の政権奪還か。日本維新の会など新党がどれだけ勢力を伸ばすか。

 日本の将来を左右する極めて重要な衆院選となろう。

 衆院が16日、解散された。衆院選は、12月4日公示、16日投開票の日程で行われる。事実上の選挙戦が始まった。

 今回の衆院選では、まず鳩山内閣以来3代、3年にわたった民主党政権の実績が問われる。

 ◆民主党に不利でも決断◆

 2009年衆院選では「政権交代」ムードが先行し、民主党が大勝した。その結果もたらされた国政の混乱と停滞を多くの有権者が痛感したのではないか。

 誤った政治主導を振りかざした鳩山内閣の外交迷走、菅内閣原子力発電所事故対応の不手際など、失政の具体例には事欠かない。

 野田首相は記者会見で、衆院解散の目的について「社会保障と税の一体改革を実現した暁には、近いうちに信を問うと言った。その約束を果たすためだ」と説明した。

 首相が、消費税率引き上げを柱とする一体改革関連法の成立を衆参ねじれ国会で実現したことは、確かに歴史に残る功績である。それに協力した自公両党との合意を大切にする姿勢は理解できる。

 極めて選挙に不利な状況にありながら、首相が輿石幹事長ら党内の反対を押し切り、解散を断行したことも評価に値しよう。

 野田内閣の支持率は低迷し、読売新聞の世論調査では昨年9月の内閣発足以来、最低の19%と危機的水準にある。民主党からの離党に歯止めがかからない。

 一方で首相は、「決められない政治が続いてきた。その悪弊を解散で断ちたい」とも述べた。

 衆院選の結果がどうであれ、参院過半数議席を有する政党はなく、少なくとも来夏の参院選までは衆参のねじれは解消しない。政治を前に動かすには、政党間の連携や連立が不可欠だ。

 ◆民自公の協調は必要だ◆

 民主、自民、公明の3党合意に基づく消費増税は道半ばである。改革を成し遂げるためにも、選挙後、民自公協調路線を維持することが求められよう。

 日本の再生にとって最も必要なのは、2大政党のいずれかを軸とする安定した政権である。合意形成に手間取るような多党化は、好ましくない。

 しかし、民主、自民両党に次ぐ第3極を目指そうと日本維新の会、太陽の党など新党が続々と誕生した。10を超える党の乱立という異例の展開で、勢力結集へ模索が続く。既成政党への不満の受け皿になることを狙っている。

 前議員が新党に走る動きは、生き残りのためではないか。第3極の真価を見極める必要がある。

 各党は、日本のあるべき「国家像」を明確にし、政策の優先度を示してもらいたい。

 09年衆院選での民主党政権公約(マニフェスト)に対する信頼は失墜した。月2万6000円の子ども手当や高速道路無料化など実現しなかったバラマキ政策は財源の裏付けを欠いていた。政治不信を増幅する原因になった。

 国民の歓心を買うため、実現性のない、大衆迎合の政策を競う愚を繰り返してはなるまい。

 新たな公約の作成に際しては、ねじれ国会で、他党の協力なしに法案が成立しないことを考えるべきだ。政策の達成期限や数値目標だけを示しても、意味はない。

 野田首相は、30年代に「原発稼働ゼロ」を目指す方針を改めて強調した。「脱原発依存の方向感を持つ政党が勝つのか、従来のエネルギー政策を進める政党が勝つのかが問われる」と位置づけた。

 ◆大衆迎合の政策避けよ◆

 国民の生活が第一みんなの党日本維新の会なども「脱原発」を唱えている。

 だが、代替エネルギーの確保や電気料金の値上げ問題、経済・雇用への悪影響など多くの懸案があり、脱原発が果たして現実的な政策と言えるのか、疑問である。

 自民党は「政府が責任を持って再稼働する」として安全性を確認した原発は活用する考えだ。中長期のエネルギー政策についても具体的に提示してほしい。

 争点は、このほか、日本経済再生のための成長戦略、環太平洋経済連携協定(TPP)参加問題、社会保障、領土・主権問題、安全保障など数多い。

 各政党、各候補の政策とその実行能力を厳しく吟味し、後悔しない「選択」を目指したい。