遠藤雅伸のゲームデザイン講義実況中継 遠藤雅伸さん

■絶対的に重要なユーザー目線

 1980年代の“ゲーセン小僧”を熱狂させた「ゼビウス」「ドルアーガの塔」の作者。今も現役のゲーム作家だが、東大大学院などで「ゲームかくあるべし」を説いてきた「斯界(しかい)のプロフェッサー」でもある。
 「昨年からは宮城大学の事業構想学部の客員教授としてゲームデザインを教えています。幅広い関心を持った学生が来ますよ。ゲームのコンテンツを作ることは、さまざまなビジネスのヒントになりますから」
 なるほど、本書で語られるゲームの作り手と遊び手の関係は、企業と消費者の関係をさらに純化した戯画のよう。仮構世界の中だからこそ、人間は貪欲(どんよく)に求めるらしい。
 「しかも、ゲームの中は現実世界の感覚とは微妙に違うから、ユーザー目線は絶対的に重要です。慣性の法則なんて忠実に再現すると、かったるすぎて遊んでもらえない。ゲーム界は、現実とは違う『ファンタジー物理』に支配されているんです」
 その一方で、課金型ソーシャルゲームなど現実と地続きの要素が増え、現実界の変化に揺さぶられる。
 「社会のデジタル化は、ゲームの面白さも変えてしまいました。80年代の面白さと、今ウケる面白さはまるで違ってしまっています」
 80年代には「優れたゲームの必須条件」とされた、生きるか死ぬかの絶妙なゲームバランスは「長い」「疲れる」と忌避されるそうだ。「何より勝てないといやなんです」
 この本で語られるプレーヤーたちは、わがままであきっぽく、きまぐれでプライドが高い。まるで王様。ゲームは王侯貴族に捧げる娯楽か。
 「そうですね。新たな総合芸術だと思って作ってますから」
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 ソフトバンククリエイティブ・2310円