核燃料サイクル プルトニウムの確実な利用を

 福井県関西電力高浜原子力発電所3号機で使うウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料がフランスから海路、日本に向かっている。6月にも到着する。

 東京電力福島第一原発の事故後、初めての輸送だ。

 日本は、エネルギー政策の一環として、核燃料サイクル計画を進めてきた。原発の使用済み核燃料から取り出したプルトニウムやウランを再利用するものだ。その柱がMOX燃料の利用である。

 核燃料サイクルは、ウラン資源の有効活用や放射性廃棄物量の軽減といった利点がある。

 プルトニウム核兵器の材料にもなる。利用されないままでは、国内外で無用な疑念を引き起こしかねない。

 関電は、輸送されたMOX燃料を確実に利用する必要がある。

 日本には大規模な再処理施設がないため、使用済み核燃料の再処理をフランスや英国に委託してきた。すでに取り出されたプルトニウム量は20トンを超える。

 仏英とも預かったままにできない。引き取りは国際的な信義にかかわる問題だ。プルトニウム利用は、日本の責務と言えよう。

 福島第一原発の事故後、民主党政権はほとんどの原発を停止させ、展望がないまま「脱原発」の方針を打ち出すなど混乱を拡大させた。核燃料サイクル計画も抜本的な見直しの対象とした。

 安倍政権でも議論は進んでいない。このままではプルトニウム利用の見通しが立たない。

 青森県六ヶ所村では日本原燃の再処理工場が完成間近だが、その利用計画も定まっていない。政府は早急に検討すべきだ。

 核兵器保有せずに、高度な再処理技術を確立する国は、日本以外にない。これまで積み上げてきた技術を簡単に捨てられまい。

 まずは、何基の原発が安全に再稼働できるのか、割り出す必要がある。原子力規制委員会は、安全確認を急がねばならない。

 再処理工場に対する規制委の姿勢にも問題がある。

 この工場で安全確認が済んでいないのは、放射能が高い廃液をガラスに固める工程だけだ。

 試験過程で発生し、タンクに保管中の廃液は固めた方が格段に安全だが、規制委は、工場そのものを当面動かす必要がないとして確認作業を後回しにしている。

 規制委は自らの役割や責任を十分認識していないのではないか。安全性の向上を着実に進めることが規制委の職務である。