学生と就職―企業と多様な出あいを

 再来年春に卒業する大学3年生の就職活動が本格スタートした。就職サイトをスマホでチェックし、スーツで会社説明会を駆けめぐり、エントリーシートを埋める日々の始まりだ。

 「長すぎる就活」は大きな社会問題になってきた。大学教育を浸食し、学生は気力をすり減らし、留学にも二の足を踏む。結局は、人材を育てる土壌が損なわれてゆく――。

 経団連は倫理憲章を見直し、例年10月に始まっていた採用向け広報活動を「12月以降に」と改めた。面接や試験などの選考は、従来通り4月からだ。

 カレンダーを2カ月遅れに書き換えた効果は、あるか。

 多くの大学のキャリアセンターは、12月のだいぶ前から準備を急ぐよう発破をかけていた。学生は先輩の苦戦も目にしている。来春卒業の4年生の10月内定率は、過去2番目に低い59.9%。ますます出遅れちゃいけないと、焦りを募らせる。

 問題は、さほど改善していないようにみえる。

 選考の時期をもっと遅らせようとの提案も出ている。だが、経済界も大学も意見は様々。解を見つけるのは難しい。

 問題の根は、大企業中心、横並び式の「新卒一括採用」への偏りにある。新卒時の就職めがけて多くの学生が一斉にレースに加わり、大学4年の一時期に集中して人気企業から内定が出る。選に漏れてゆく学生は、何度も自己否定を強いられ、長い就活を続けることになる。

 学生自身が、就活カレンダーや、就職する時期をより柔軟に選べるよう、多くの選択肢を用意することだ。

 ネスレ日本は次の採用から、年齢や学歴にとらわれぬ方式に切り替える。1次選考は高卒以上なら何度でも挑戦可能。試験は年3回実施する。

 ユニクロファーストリテイリングも、同様の見直しを検討中だ。柳井正会長は「一括採用だと、同じような人ばかりになる」と語っている。

 学生時代やその前後の一定期間、ボランティア活動などに就く「ギャップイヤー」経験を、採用の際に積極評価してはどうか。経団連はそんな提言もしている。海外を含め、どこかに寄り道した既卒者の採用を広げることも必要だろう。

 人気企業が10年先も生き残るとは限らない。一人一人の個性にあった、今は名もない会社とのマッチングも工夫したい。

 多様な人材を育て、擁することが、企業の活力になる。若者と社会は、もっといろんな出あい方をしてよいはずだ。